1942年、第二次世界大戦末期のアメリカ合衆国。海軍日本語学校に、ひとりの青年士官が入学する。彼の名はドナルド・キーン。のちに日本文学・日本文化研究の第一人者として名を馳せ、日本に永住し、96歳で日本で生涯を終えた人物である。さまざまな参考文献を元に、ドナルドさんの青春時代を描いた伝記小説です。
敵国にいながら、日本語を学び、日本文化を愛するドナルドさんと終戦直後の日本人との交流が友愛に溢れて涙を誘います。
ハワイに赴任したドナルド少尉の任務は、捕虜の尋問。しかし、彼が出会ったのは「敵国兵士」ではなく、家族を愛し、平和を願うごく普通の「日本人」。英語を話したがる者もいれば、戦争に疑問を抱く者もいる。ドナルドさんは、そんな捕虜たちと友達になろうとする。最初は警戒していた捕虜たちも、共にコーヒーを飲み、語り合ううちに、次第に笑顔を見せていく。そんな政治や戦争を越えた友情が胸を打つんです。
遠い異国の地から本当の日本を愛してくれたドナルドさんに、深い敬意と感謝の念が湧き上がる。彼の思いは、戦争の時代を超えて、今を生きる私たちにも大切なことを教えてくれている。
(「日本語を楽しもう」4選/文=愛咲優詩)