第17話 感染対策
~私の調査メモ~
感染経路は、呪われた血…ではなく、文字通りの呪われた「ち」でした
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爭羽吐村。
かつての、まつろわぬ民の村。
その村が燃えている。
村を焼く炎から逃げ延びた私達は、力無くその炎を眺めているだけでした。
洞窟は崩壊した。
【呪い】の遺跡も、耳のミイラも、文字が記された紙も、
村の人間も、残らず炎の中に消えた。
炎は【呪われた血】発症の地の全てを消し去った。
でも。
「そうだ…。まだ、終わりじゃない。」
私は我に返ります。
「カイト君を助けなきゃ…。」
私の言葉に、カイト君は目を伏せます。
そして、懐から携帯電話を取り出すと、文字を打ち込みます。
一頻り文字を打ち込んだ後、私に携帯電話を渡します。
「読め」ということでしょう。
私は携帯電話の小さな画面に目を落とします。
『もう一つ、推測がある。
感染経路を辿る最中、僕とマリさんはおそらく女子高生から感染した。
だが、検査でマリさんは感染していなかった。
君が感染していないと知って、考えた。
君と僕の差は何か?
【おじさん】に会った時、僕たち二人は感染していた。
だが、直後、君の症状は消えた。
検査でもレントゲンでも、異常はなっかった。
その差は何か?』
私とカイト君の違い…。
思い当たることがあるとすれば…、
私は【おじさん】にガラス刃を向けて、
その時、私は意識が朦朧としていて…、
【おじさん】がガラス刃を手にして、
自分の喉を切り裂いて、
【おじさん】の血が私の顔に掛かって…、
…。
……!
まさか…。
「感染者の、病原体保持者の…『血を飲む』?」
「そう、それが脳に巣食う『呪い』を消し去る手段だと推測できる。」
「じゃ、じゃあ、私は感染していなかったの?
でも、それならその手段を病院に報告すれば助かる人がいるかもしれない! カイト君も、助かるよ!」
「確証はない。ただの推測だ。それに…。」
カイト君の表情が曇る。
「それに?」
カイト君は再び携帯電話に文字を打ち込み、私に見せる。
『この呪いからの解放手段が、仮に「感染者の生き血を飲む」事だとしたら…。
普通、死体の血液は早ければ数時間で腐敗が起きる。
つまり、生きている人間の血液…生き血でなければ効果は無いと思う。
もし、僕のこの推測が間違ってなかったとしたら…。
そして、これも『日本人への復讐』のシナリオの一つだとしたら…。
それは、…更に凄惨で、冒涜的な未来を思い起こさせる。
幸い、メールやメモとかの描き文字では感染しない。
ようは、喋らなければいいんだ。
だからまだ「血を飲む」という手段は、公表はしない方がいいと思う。』
カイト君が抱く、嫌な予感。
私は一旦、カイト君の言葉に従います。
…それで私はカイト君に救われ続けてきたのですから。
「最後の感染源を、追いましょう。」
カイト君は、そう私に言いました。
その言葉使いは、私達が出会った頃のように、穏やかでした。
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