夜明けの空にまいた種

Rotten flower

第1話

風が草原を走っていった。後ろ姿の少女の服が風によってなびく。私はそれを地べたに座って眺めていた。

「こんなところで何をしているんだ?」

私は少女に問う。少女は少しを間を開けて一つ、呼吸をする。ニ度目に口を開いたときこう告げた。

「私はこの真っ暗な夜が嫌い」

私は耳からその言葉が脳に飛び込んでから一瞬、いや二つ時間が経ってから「……だから?」と何の答えでもないことに気づいた。

少女はゆっくりとこちらを振り返るように向くとこちらに掌の中身を見せてきた。

「これ、ヒカリゴケの種」

……私の頭の上に「?」がもっと多く浮かぶ想像ができた。

「それをどうするの?」私は単刀直入にそう聞いた。少女はニヤッとして告げる。

「空には太陽や月がある。私の力でこれを飛ばして空をもっときれいにする」と理由もわからないことを言う。少女は私の掌に一粒、その種をもたせる。

夜もふけ四時くらいになった。彼女は太陽に背くように西の空を向く。そのまま、助走をつけて「えい」と言葉を漏らしながら助走をつけて飛ばす。勿論、そんなに飛ぶはずはない。と、それらの種を乗せるように風が吹いた。種が見えない距離に飛んでいく。と、動きが止まった種が空を照らし出した。彼女はふふっと微笑むとそれらの光を楽しんでいた。

……私も掌にある種を今度は東側へ飛ばす。かすかにオレンジ色の空に向かって私の吹かせた風で飛んでいく。

これも空を照らす一つの星へとなった。


「あ、母さん!」少女が女性に連れられてどこかへ去っていく。

「何をしていたの?」「あの、白いベールを着た人と遊んでいたの」

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