オタクに厳しいギャルに虐げられている彼の青春を矯正するために女王様になります。学級委員長として!

詩一

第1話 学級委員長として

 すっかり女王様になったわたしは、丸めた教科書を折乃おりのくんの股間に押し付けてぐりぐりと捩じった。


「あぅっ」


 その顔は苦痛に歪んでいるようでいて、悦んでいた。瞳はとろんとして焦点が合っておらず、漏れ出た吐息は触れていなくても温かさが伝わって来る。小動物を思わせる愛くるしい瞳はとても高校生とは思えない幼さで、背徳感が高まり嗜虐心をそそられてしまう。


「躾のつもりがご褒美になってしまったようね」

「や、やめてよぅ……、禾女井のぎめいさぁん……」


 だらしなく開かれた口元から出た言葉は抗い。でも甘えて縋るようなニュアンス。その声は鼓膜にへばりつき、ねっとりと撫でた。脳と耳の間で生まれたゾクゾクと言う快感が体の裏側を走り、足元へと抜けていく。わたしは鼻息が荒くなるのを悟られぬように、さらに一歩踏み出し固く握ったままの教科書で深く抉る。彼は机に手をついて瞼をぎゅっと閉じた。声が出るのを我慢しているのだろう。その一方で腰はおねだりをするように浮いている。


「二人でいるときは聡美さとみ様って言うんだったよね?」


 ぐりぐりっ!


「うあぁっ、はいぃ……! ありがとうございます聡美さとみ様ぁ……」


 ああ、わたしのこれまでの努力が、彼の未知なる領域を開墾したのだ。わたしの、わたしだけの真正ドMが誕生し、開発権はわたしに委ねられたのだ。つまりそこは、墾田永年私財法こんでんえいねんしざいほうと言うわけだ。これもお姉ちゃんのおかげだね。ありがとう。

 日が暮れた中庭の花々はもうすっかり鉄紺てつこん色に染められ、窓ガラスは教室の外よりも内側を色濃く映していた。そこに立つ女は恍惚とした表情でこちらを見つめていた。赤いフォックスタイプの眼鏡の先にある瞳と……つまりわたしと目が合って、ふと我に返る。


 ——どうしてこうなった……?


 いや、もちろん動機ははっきりしていた。折乃おりのくんのためだ。そう。彼の歪曲した青春を矯正し、本当の価値ある高校生活を謳歌してもらうために、わたしは一肌脱いで頑張ってきたのだ。学級委員長として。

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