降臨者達ノ断章 ― 神意の余白 ―
toto
第1話――
―――――――――――――――
休日の夜、四人はいつものように、少し広めの公園に集まっていた。
特に有名でも特別でもないけれど、遊具が大きくて、小さい頃から馴染みのある場所だ。
中学の頃は、ここでよく動画を撮って遊んでいた。
ライトセーバーを振り回したり、アニメのオープニングを真似して走り回ったり。
通販で買った剣や衣装を持ち寄って、意味もなく本気で撮影していた。
今思えば、よく飽きずにやっていたなと思う。
でも――ああいう時間が一番気楽だった。
高校に上がってからは、四人のうち二人は別の高校へ進んで、生活もバラバラだ。
バドミントンをやっている二人、他校で演劇に打ち込んでいる一人、茶道部で静かに頑張っている一人。
さらに、部活に加えてバイトまでしている から、以前みたいに気軽に集まるのは難しくなった。
それでも、こうやって顔を合わせると、なんとなく安心する。
懐かしい感じと、楽しい気持ちが自然と湧いてくる。
『集まんの久々だな』
誰ともなくこぼれたその言葉に、全員が小さく笑った。
変わったことは多いけど、変わらない場所がある。
ただそれだけで、今日が少し特別に思えた。
高い滑り台の上で座り、そのまま空を見上げていると、笑い声も落ち着き、少し静かになった。
夜風が頬を撫で、遊具の金属がひんやり光る。
懐かしさに浸っていた瞬間。
耳を貫くような高音が、突如として頭の奥を刺激する。
「キィィン――!」
自然に手で耳を塞ぐが、音は止まらない。
『っ、耳鳴りヤバ…』
顔を上げると、三人も同じように苦しそうな表情をしていた。
『…頭、痛ぇ…』
音はさらに大きくなり、世界がそれしかないように感じた。
耐えきれず、思わず呻く。
『もう無理っ…!』
――その瞬間、音が途切れた。
静寂。
聞こえるのは自分の鼓動だけ。
世界が息を潜めたような、異様な感覚。
ゆっくりと目線を上げると――
目の前に、光の球体がゆっくり浮かんでいた。
状況を理解する前に、気づけば俺たちは並んで手を伸ばしていた。
まるで、導かれるかのように。
『え……?』
指先が光に触れる、刹那、眩い閃光が全身を包み込む――。
✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹✹
―――頭が追いつかない。
……ここは、どこなんだ?
涼しい風が吹き抜け、視界のすべてが空で埋め尽くされている。
周囲には、崩れた神殿のような建造物の破片が、ばらばらのまま宙に浮かんでいた。
俺たちが立っている足場も、その瓦礫のひとつなのだろう。
下を見ようとして、思わず息を呑む。
底は、見えない。
落ちたら、終わりだ——そんな確信だけが胸に刺さった。
周りを見渡し、ようやく分かる。
俺たちは、まとめて“どこか”へ飛ばされたのだ。
『みんな……大丈夫か?』
声をかけると、皆が何とも言えない表情で応える。
『いや……大丈夫、なのか?』
『え、俺ら死んだ?』
『なわけ……』
一人が周囲を警戒するように、一歩だけ踏み出した。
『……あれ、どうなってんの?』
『ちょっと待てって、風強いし……ここ高すぎだろ。下、何も見えないんだけど』
その時だった。
『……あれ』
低く漏れた声。
『人、いないか?』
指差された先を見る。
崩れかけた神殿の屋根の上——
そこに、ひとりの女性が座っていた。
長い黒髪と、靡く白いワンピース。
彼女は空を見上げ、足をぶらぶらと揺らしている。
『なぁ……誰か声かけてよ』
距離は、そう遠くない。
それなのに——誰も声を出せなかった。
次の瞬間。
彼女が、ゆっくりと顔をこちらに向けた。
こちらを見た、のではない。
“見つけた”という確信が、その視線にはあった。
風が一段、強く吹く。
空気が、変わった。
『……やっぱり』
小さな独り言。
確かに聞こえたはずなのに、距離感が掴めない。
彼女は屋根の縁に立ち、何もないはずの空へ一歩踏み出す。
落ちる——そう思った瞬間、足元に淡い光が走り、彼女は宙を歩くように降りてきた。
誰も、声を出せない。
『待ってたよ。おかえり』
その声は優しく、蒼い瞳で俺達を順に見た。
げど——おかえり?
俺たちに、彼女と面識はない。
あんな印象的な人物、見たことあるはずがないのに。
『分かってはいたけど……やっぱり寂しいね。私だけって』
すると沈黙を破った。
『……俺たちを、知ってるの?』
彼女は、その問いが嬉しかったかのように微笑む。
『うん。身長が高くて細身の君は、
一人ずつ、視線を向けながら言葉を重ねる。
『左から大人しくて静かな
——俺たちが、よく言われる第一印象とあだ名。
それを、完璧に。
なぜ俺達の名前を知っているんだ…。
彼女は言い終えると、俺たちに背を向けた。
『でも、それは“転生後”の名前』
その声は、どこか遠い。
『みんなを覚えているのは、私だけ。
友達も、家族も……世界が、忘れたの』
かわしーが困惑したように頭を掻く。
『えっと……正直、言ってる意味が分からないんだけど』
彼女は、静かに振り返った。
『みんなはね、一度転生したの』
『――“テオナ”。あの星で死んだ』
空気が、凍りつく。
『そして、十六年の歳月が経った時……再び“降臨”する』
十六年——
胸の奥で、何かが引っかかる。
ここに来る前、あの日は年越しの日だった、確かに年が変わり経った、でも俺達がここに来る理由にならない。
ツバサが問う。
『自分達は……なんでここに来の?それに、転生って……どういうこと』
彼女は少しだけ目を伏せ、そして告げた。
『みんなが誕生した星は、テオナ』
『再創生を免れるために転生し、成長の伸びが最も高い“十六から十八”の間に——』
一歩、彼女が近づく。
『かつての“神の座”に就くまでの追憶を回収し、失われた自分を取り戻し……』
彼女は、まっすぐ俺たちを見た。
『もう一度、神として生き直すため』
沈黙――。
誰も、すぐには言葉を見つけられなかった。
やがて、テルイが小さく呟く。
『……じゃあ』
『俺たち……人間じゃ、ないの?』
彼女は一瞬だけ悲しそうに微笑み、首を横に振った。
『今は、まだ人間』
『でも、いずれ思い出す。“何だったか”も、“何を失ったか”も』
風が、再び強く吹いた。
『だから……』
彼女は、名を告げる。
『私の名前は、アリア』
『テオナで“神”だった存在』
その瞳に、長い孤独が宿っていた。
『……そして、みんなの“始まり”を知る、唯一の生き残り』
『聞いて、私達のこれからを――』
…………………………………………………
降臨者達ノ断章 ― 神意の余白 ― toto @haruto8910
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