第1話 沈黙の家


朝の光が差し込む仙台の住宅街。

安藤誠は、目覚まし時計のベルに無理やり起こされるようにベッドから起き上がった。眠気はまだ抜けず、身体が鉛のように重い。

朝食のテーブルには妻の沙織が作った和食が並んでいたが、家族の会話はなかった。

長女の菜々はスマホに夢中で、次女のひよりは静かにお茶を飲んでいる。

「誠、おはよう」と声をかける沙織の声もどこか疲れている。

誠は小さく返事をするだけで、気まずい空気が家を包んでいた。職場でも孤立し、誰とも深く話せない毎日。何度かの転職を経て、今は小さな営業所に籍を置いているが、居場所を感じられない。

昼休み、ひとりぼんやりと窓の外の仙台駅前を眺めていると、同僚たちの笑い声が遠くに聞こえた。


「このまま、何も変わらないのか」


そう思うと、胸が締め付けられた。

そんなある夜、通勤途中の電車の中で何気なく開いた配信アプリで、まる。の声が響く。

柔らかくて、落ち着く声。誠の胸の奥の寂しさをやわらげる何かがあった。

彼は初めて、知らない誰かに心を許したような気がした。

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