ジュブナイル 秘密の言語
秋乃月詠
1 淡いドレスの少女
小学六年の夏休み間近の7月
僕のクラスに転校生がやって来た。
彼女の名前はナタリー
スウェーデンというヨーロッパの国から父親の仕事の都合で引っ越してきたらしい。
ナタリーの両親の事はあまり覚えていない、ただナタリーと同じブロンドの髪と青い目だった事くらいの記憶しか残ってない。
6年生の頃の僕といえば住んでた団地の裏山の山頂にあった古墳で土器の欠片を探すことに夢中だった。
僕が生まれる前は銅剣や装飾品等も出土したらしくローカルテレビで放送されたこともあるし、出土品は公民館にも展示されていたので地元ではちょっとだけ有名な山だった
裏山に行く時はテレビで見た探検隊の真似してとにかくポケットの多い半ズボン、襟のついたシャツの袖を腕まで捲る更にポケットのたくさんついはベージュのベストを羽織る。何故かそこにカープ赤いキャップという何ともアンバランスな格好で探検気分て演出していた。
肩掛けの帆布の鞄にはスコップ、歯ブラシ、近所のおじさんから貰った塗装用の刷毛、カッターナイフ、使いもしないコンパス、麦茶を入れたポカリスエットの水筒、数個の駄菓子を入れて山に入って行く。
登山口はあるのだが地元の子供が使う近道の獣道を使って山頂を目指す。
途中には木にロープを結んでぶら下がって遊ぶターザンロープ、おたまじゃくしとカエルがたくさん取れる貯水池のタマタマ基地、ハゼ、沢蟹、田螺が居る冷たい水が流れる小さな沢、土団子を作るときに使う粘土質の土が取れて子供達に人気の崖。アケビの蔦、赤く甘酸っぱいグイの実、甘い蛇苺、無花果、栗など見渡せばおやつもたくさんあった。
そして山頂には古墳があるのだ、正に最強の裏山。
そんな最強の裏山の正し名前は知らなかったが僕たちはハゲ山とよんでいた。
山頂には古墳があるのでそこだけ草木が生えてない、てっぺんハゲのハゲ山。
ハゲ山は当然面白い事だけではなく危険もいっぱいあった。
うっかりアナバチの巣を踏んづけて目の上を刺されたりアオダイショウやシマヘビ、マムシ等の蛇との遭遇も多々あった。
しかし小学生の私には裏山は楽園で放課後の全てだった。
そしてナタリーと出会った場所。
僕はいつも通り獣道をぐんぐん歩き山頂を目指す、山頂にに着いた瞬間いつも通りではなくなった。
彼女の姿が目に入り心臓に衝撃が走った、その時の衝撃は今もずっと続いている。
山頂から町を見つめる青い瞳、山の涼しい風になびくブロンド、そして何よりも僕の心を引き付けのは淡い水色のワンピース、そこから伸びる白く細い四肢。
僕は何か大切な誰にも渡せないものを見つけた興奮に震えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます