音や匂いまで感じるような、美しい情景の中で紡がれる、愛と狂気のニ篇です。どちらの物語の登場人物も、命や時間を超越した感覚で深く深く相手を想っています。自らの人生を滅ぼすほど愛せる相手に出会える事は幸せですね。
詩のように美しく、そして静かに恐ろしい。「詩的ホラー」という名にふさわしい幻想短編集です。もしかすると読んでいる途中で戸惑う人もいるかもしれません。それでも、どうか最後まで目を通してください。この作品でしか触れられない、美と恐怖の風景が待っています。
静けさの中に狂気が潜む詩的ホラー短編集。「愛」と「死」が溶け合い、読者は美しい悪夢の水面に沈められる。淡々とした語りが、やがて狂気へと変貌していく過程は見事で、川のせせらぎや花弁の揺らめきといった自然描写が登場人物の心理と呼応するように胸を締めつける。それは恐怖というよりも、痛みを伴うほどの美しさ。読後、心に残るのは血でも悲鳴でもなく、静寂と微笑のあわいに咲く、永遠の愛の残香。詩的でありながら、確かに怖い。そんな眠れる狂気を堪能できる一冊。