その祐筆は優秀である。
底無しビューティー
第1話 王国の城
その城の中枢、地下深くには"月虹の間"と呼ばれる空間があった。
大陸の東の端に、スティルス半島と呼ばれる丸い半島がある。
そこは古くから中立を貫く、ディグダン王国。
ディグダン王家が守るその地は、平和で住みやすいと知られている。自然が多く、ほぼ300℃近く海に囲まれている。
大陸と繋がる僅か約60℃の部分も、潮が満ちると大陸と半島を繋ぐ道が海に消え、潮が引くとまた道ができる。
半島の最北にその城はあった。
最も標高の高い所で、城の背面は断崖絶壁。
落ちたら紺碧の深い海。
冬の山の頂上にかかる雪雲のような、
白く丸いそれを観て人々はこう呼んだ。
半月城。
古くからあるその城が、どうやって建てられたのか、どんな図面が図れ、どんな人材を使い、どんな素材を使っているのかさえ、国民に周知されていない。
ただこの国の城はこの白く丸い半球体の建物であると、誰もが当たり前に受け入れていた。
大陸の人々からはいつかは実物を見てみたいと、建物好きな人々の間ではちょっとした神秘的な観光地でもあった。
近年、大陸で目覚ましい発展を始めた産業、鉄道がこの半島にも敷かれると、あっという間に裕福な王侯貴族商人が訪れる様になった。
満ち潮で冠水してしまわない様に、計算されて造られてはいたが、なんと言っても相手は自然だ。
運行が止まる事は多々ある。
時間とお金の余裕のある者だけが行ける、隣国の貴族の間では一つのステータスにもなっている。
豊かな海の資源を求めて、攻め入られてもおかしくないほどの海域を有しているのにも関わらず、その歴史に戦争の記録は無い。
まるで、目に見えない防壁に囲まれている様だと、その地を訪れた人々は言う。
政治の中心、王家の下にある身分は貴族ではなく、スティルスの森と呼ばれる六つの土地とその長、「森の杭」と呼ばれる人々だった。
赤、橙、黄、緑、青、紫とそれぞれの森に与えられた色があり、王家の色は白と黒。
大陸との国境に隣り合う、玄関口となっているのは、赤い杭の森で、鉄道整備を国へ進言し推し進めたのも、この赤の杭の長だ。
世界と共にこの半島にも時代の変化が求められていた。
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