第6話

【この手】




誰にも気付かれないように

街灯は光を濡らす

薄暗い明け方の空

細い雨音の旋律(しらべ)


追えない速さで消えてゆく

繰り返えされる過ちを

それを正義(せいぎ)というのなら

傷つく前に傷つけてしまう




貴方は私から

まだ遠いのだと知りながら

僅かに触れた気がした

隣り合わせの感情




この手をずっと離さないでよ

イタズラな運命だとしても

重なる視線のその先を

それだけで構わないのに


いつか終わりが迎えに来て

孤独にサヨナラを告げる時も

思い残すことの無いくらい

その全てを愛してる




薄暮れに吐息が堕ちる

明日が不安へと変わる

褪せた枯れ葉が地面を覆う

影は色付き帯びてゆく


喧噪(けんそう)に紛れた声が

微かにでも響くのなら

僕の世界が消え去っても

貴方だけは笑顔でいて




変わりゆく時の音(ね)に

気付いてた筈なのに

すれ違いの愛しさも

言葉に出来れば良かったの




この手をずっと離さないよ

イタズラな運命だとしても

戻らない季節を想いながら

それでもどこかで願っていた


いつか終わりが迎えに来て

孤独にサヨナラを告げる時を

生きた証だというのなら

その全てを愛してゆく



愛してゆく



愛している

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