純文学というものにあまり馴染みはないのだけど、いったん読みはじめると深みにはまる中毒性がある。この小説はそういった気持ちを思い起こさせてくれました。
奈津芽(なつめ)という女性が抱いている心情をとても丁寧に描いた作品です。共感し感情移入する人も多いのではないでしょうか。奈津芽の気持ちがするりと自分に入り込む感覚がとても気持ちがいい。
後半からは友人の沙苗の導きによって、すこしふしぎな世界へと足を踏み入れます。タグにもある通り、幻想小説へと様変わり。
この世界を通し、奈津芽の抱えるわだかまりを解いてゆく物語ではあります。ただラストに辿り着いた瞬間、沙苗という女性についてもこれまで語られていた内容を改めて考察したくなる構成にもなっています。
二周しました。だけど理解しきれたとはとてもじゃないけど言えません。気になる部分を読み返すなかで、「あの台詞はここに繋がっていたのかも?」というさらなる別の発見もあります。
その内容を盛り込んでいるのは意図的であるのか。いや、何気ない一文を私が拾い上げて繋げただけかも。
正解はわからないけれど、自分なりの答えを探って楽しむことができる。純文学の醍醐味を再確認させていただきました。
こういった「純文学要素」を抜きにしてもおすすめしたい作品です。易しくありながらも的確な心理描写、吸われるように読んでしまう筆致は圧巻です。
ぜひ楽しまれてください。