地獄に生まれ誰にも助けてもらえなかった少年の最後
1月17日午前12時半。周りに歩いている人は誰もおらず電灯以外の光はない。そんな暗く寂しい道を歩きながら森井まさとは、片手でスマホを見ながら今日得た新しい情報のことを考えていた。
あの女の子は腕を持っており、次の獲物を見つけたときに落としている。これに深い意味はない気がする、ただ何となく持っていたのだろう。そもそも中身が人間を殺すこと以外考えていないはずだ。
「あ、あった」
ようやく探していたものを見つけた。探していたのはまさとの顔写真だった。なぜ如月がまさとだと気づけたのかずっと疑問だったが、理由は単純だった。SNSにまさとの顔が流出していたのだ。まさとは自分が未成年だったため、顔は出ていないだろうと思っていたのだが。きっとどこからか流れたのだろう。だから実際に会ってもばれないし、これからのためにも社会の経験を積んでおこうと考えていた。
話を聞いている最中も如月は震えていたが、だんだんそんなわけないと考えるようになって最後には落ち着いていた。二人から話を聞かせてもらい、挨拶をした後は解散して今に至る。
まさとはお腹も空かないし、痛みも感じなかった。そのため一日中何も飲まず食わずでも何も感じないし、熱い風呂に入っても熱くなかった。だから死なないだろうと考えているのだが、一つ気になることがあった。
それは自分がなぜ生きているのかということ。あの保険として生まれたもう一人の自分が最後に言っていたあの言葉。そしてそれを裏付けるように、起きてほしくない最悪の事態が頭にあった。
「ん?」
いろんなことを考えてながら歩いていると、T字になった道の突き当りたどり着いた。そして目の前にある電柱が動いた気がする。
「え?」
気のせいじゃない。そして長い手がこちらに伸びてくる。そしてまさとの脇をガシッと掴み、そのまま上に持ち上げてくる。
こうなってようやく気づいた。こいつは顔が見えないほどの長身の人。脇腹を抱えられ持ち上げられるこの感覚をまさとは覚えていた。よくみんなを高い高いしてくれた人。
「海先生?」
どんどん上に持ち上げられていく。本来ならこいつらを止めるために何かしなければいけないのに、何もできなかった。大きな手で体をつかまれ動けなかった。遂に限界まで持ち上げられ、髪の毛で隠れた顔が見えた。
「・・・・・・・・誰?」
やっと見えた顔は海先生ではなく、知らない人だった。その人は真顔で何の感情も沸いていなさそうだった。突如手が持ち変えられ、まさとの体が半回転して地面と垂直にされた。
ゴシャッ
そしてそのまま勢いをつけて地面に激突させられた。地面に激突させられる間にまさとは、自分が考えていた最悪の事態が実現することに気づいた。
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