第13話 かき氷~三菱未来館

 厚夫はこのままホテルに戻ると言う。東ゲートから。一郎はトルクメニスタン館に行って来ると言う。一郎は、前回6月に来た時よりも今日は疲れていないと言った。あの時は雨で涼しかったのだが、前日に名古屋でコンサートがあって、その後ここに来たので、どうやら疲れていたよう。今回予約は何一つ取れなかった一郎だが、色々入れて良かったと言っている。何度か一郎は当日解放枠を狙っているのだが、ダメなようだ。私はもう、競争なのは面倒で諦めた。3日前から早い者勝ちの予約が出来るようだが。

 さて、私は歩き回った時に看板を見かけた、かき氷が食べたくなった。あまりかき氷は食べない方だが、今は食べたい。それだけ暑い。この辺りにあったはずだと歩いて行くと、「らぽっぽ」にかき氷が売っているのを二郎が発見した。4月に来た時に、お昼を探してキッチンカーを見て回り、らぽっぽでポテト&フリットを食べた事があった。またらぽっぽなのかと笑える。今度はかき氷だ。メニューを見たらリンゴ味のかき氷があって、それに決めた。二郎にも何か買ってあげようかと言ったら、一口もらえばいいと言うので、一人分だけ買う事に。二郎には席を取っておいてもらい、独りで並んで買った。

 日陰の席は空いていないので日向だが、日傘で陰を作って二郎が座っていた。そこへかき氷を持って行き、食べた。すごく美味い。こんなに美味しいかき氷は初めて食べた。誇張でも何でもない。本当にそう思った。二郎も一口食べたら美味しくて、結局半分食べたが、それでちょうど良かった。らぽっぽらしく小さい大学芋が4つ添えられていて、それを食べたらすっごく美味しかった。でも、それを食べてしまうとかき氷が甘く感じなくなるのが難点だった。

「冷えたねえ。」

「涼しくなったよねえ。」

二郎と言い合った。さっきちょっと頭痛がしていたのがすっかり治った。やはり中から冷やすのは効率がいい。よく、暑さは蓄積されるので、涼しい所へ行ってから熱中症で倒れたりする事もあると聞く。今、だいぶ日が傾いてきて暑さは和らいできたが、氷を食べなかったらこの後やばかったかもしれない。

 ふと気づけばもうすぐ5時だった。私は5時半までに三菱未来館に行かなければならない。二郎は、西の方にある飯田グループと大阪公立大の共同出展館に行ってみると言った。建築がどうのというパビリオンだ。二郎はデザイン系を学んでいるので興味があるのだろう。ということで、ここで別れた。


 一人になり、東ゲートの方へと向かった。以前ここから東ゲートに向かおうとして間違えて西ゲートの方に行ってしまったという失敗をしたことがあるので、今度は慎重に。三菱未来館に行く前に、トイレに行こうと思って、懐かしいボランティアセンターの前にあるトイレに向かった。

 すると、向こうからボランティアの集団が歩いてきた。そうそう、よくこの光景に出逢ったよなあ。皆さん、これからあちこちでエリア活動をするのだ。あ、ちょっと待てよ。今までボランティアを全く見かけなかったぞ。すっかり忘れていた。あまりに観客がたくさんいて、ボランティアが目立たないというか、見つけられないという事なのだろうか。やっぱり出会えたらラッキーな存在だな。出会えたからって幸運かどうかは分からないが。

 トイレを済ませ、三菱未来館に入れる時間まで時計とにらめっこをして、時間になったので階段を下りて行った。これだけは、私が第二希望で2か月前抽選に応募して当たったのだ。因みに第一希望は家族全員、石黒館だったのだが。アンドロイドの。

 QRコードをピッとやった。これをやったのは入場ゲートとここだけ。なんと出番の少ないQRコード。それなら紙に印刷しなくとも、スクリーンショットで充分だったかも。しばらくバラバラとゆるく並びながら進む。周りは家族連れとかカップルばかり。独りの人もいるのかもしれないけれど、独りだとしゃべらないから目立たないのでいないように思える。ちょっと心細い。

 少し外で待たされた後、建物の中に入った。日本人のスタッフさんが角々に立って挨拶をしてくれる。これが日本式おもてなし。そして開けた場所に出ると、説明が始まった。ちょっと大事なところになると咳が出そうで怖い。人が密集したのでマスクをした。因みに、私の病気はもう人にうつす段階ではないはずである。抗生物質をとっくに飲み終えているから。だが、咳を吹きかけられたら誰だって嫌だろうからマスクを常に持っている。

 一人になると体調の事ばかり気になってきて、喉の痰が気持ち悪い。そのうちスクリーンのある部屋に移動した。一番後ろの席に座った。しかもほぼ端っこだ。で、マスクをしていると息苦しさを余計に感じて具合が悪くなるので、マスクを外した。元気なら一人旅も好きなのに、病気だと一人が心細い。余計に具合が悪くなってしまう。

 それでも、映像は面白かった。没入感たっぷりだ。こういうのは大好き。ただ、新しさはない。今、このような没入体験はあちこちで出来るだろう。火星に行くというのは新しかったかもしれないが。

 映像が終わって、子供に交じって並び、スタンプを押した。そして外へ。おお、もうすっかり夕方だ。

 近くのベンチに座った。夕焼け空と大屋根リングの写真を撮った。綺麗だ。そして、ほぼ全土が日陰になり、だいぶ涼しくなった。なんだよー、あとちょっとだったよな、厚夫よ。

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