第5話 万博会場に入場
着いた。万博だ。西ゲート前。9時47分。向こうの方にものすごい列が見えた。日傘がたくさん連なっている。
「あー、10時台の後ろの方になっちゃったね。」
一郎が残念そうに言った。いやいや、
「9時だよ。」
私が言うと、
「え?9時の予約取れてんの?」
驚いている。既に9時の列は短い。そりゃ、もうどんどん入場しているからね。それにしては進みが遅いけれど。屋根からちょっと出てしまうくらいの所に着き、私と二郎はパンを半分ずつ食べた。一郎はもう食べてしまったらしい。多分私が朝ごはんを買っている間に食べてしまったのだろう。自分が並んでいる時に食べようと言ったのに。待ちきれなかったのだね。
非常にゆっくりと進む列。そのうち10時になった。10時予約の人の列がどーっとこちらへやってきた。我々は9時の最後尾だった。流石に9時に予約しているのに、9時45分にやってくるのんびり屋さんはそういない。でも、私はこの方が並ぶ時間を最小限にすると思っていた。ちょっと予定より遅れたが、9時15分から30分の間に着くように来ようと思っていたのだ。そのくらいがちょうどいい。10時の予約の人よりも先に入れたらそれでいい。
実際、10時は過ぎてしまったが、並んだのは約20分間。入場するのに1時間も2時間も並んだという話を聞く事が多いが、並び始める時間次第ではこれだけ短くできるのだ。
西ゲート周辺は、ボランティアの時に歩いたのでよく知っていると思っていたが、ミャクミャクグッズの公式ショップがあってびっくり。そうそう、これは4月にはまだオープンしていなかったのだ。それで、うっかり入る。
「あ、これ欲しい!」
ミニタオルが600円くらいで売っていたので思わず手を伸ばす。それと、キーホルダーなどを物色。欲しい物が多いが、結局カバンに付けたりしないしなーと迷っていたら、二郎が太った感じのミャクミャクのぬいぐるみを手に取り、
「これがいい。」
と言うので、それも買う事に。まだお店は全然混んでいなくてレジもほとんど並んではいないので、すぐに買えた。
店を出たところで、カリンちゃんから連絡が。
「今どんな感じですか?」
と。そうだった!カリンちゃんは10時15分まで待っていてくれるのだった。もっと早く無理だと連絡すればよかった。フランス館の前で待っていてくれるという事だったが、フランス館は東ゲートに近い。西ゲートからは20分以上かかるだろう。我々が10時を過ぎて入場した時点で間に合わなかったのだ。10時に連絡すればよかった。
ということで申し訳なかったが、2時のクウエート館には行くと伝えた。
私が最初に万博に入った時には、来たー!という感動があった。従業員用の出入口から場内に入ると、パビリオンがバーンといくつも目に飛び込んで来て、万博だーと思った。しかし、今は正式なでっかいゲートから入場したものの、出迎えのボランティアもいないし、多くの人が日傘を差し、皆リングの方へ向かってズラズラと歩いていて、なんだか感動的ではない。
厚夫が西の端の方を見たいというので、4人で少し西の方へ行ってみた。エスニックフードが食べられる店があり、空いている模様。厚夫が食べようかと言う。
「いやいや、まだお腹空いてないし。それに、ちゃんと外国のパビリオンのレストランに行きたいじゃん。」
私や二郎に反対され、厚夫は拗ねてもっと西へと行くらしい。一郎は、これ以上西に行っても何もないから、リングの方へ行こうと言う。
ということで、厚夫とは早速別れ、3人でリングの方へ歩きだした。途中、ウォーターサーバーがあったので、水筒に水を入れた。水筒には元々水を入れてきたが、だいぶ減っていたので追加しようと思ったのだ。かつて、ボランティアに来た時に、暑い日には列が出来てしまったから、夏にはどれだけウォーターサーバーの列が出来るだろうかと思ったが、案外空いている。1人か2人待っただけで入れる事が出来た。しかし。
「ぬるい……。」
水はぬるかった。やっぱりか。4月には冷たくて美味しい水だったのだが。そりゃ、この日差しで、多くの人がどんどん水を汲み出せば、冷たい水を提供できるとは思えないものな。
息子たちは水筒を持って来ておらず、自販機でジュースなどを買っていた。エコだからとか、タダなんだからとか言ってウォーターサーバーの利用を促したいと思っていたが、このぬるさでは人に無理に勧められない。
二郎はキャップを被っていたが、
「お母さん、日傘ある?」
と言う。実は、持っている。
「貸そうか?」
「うん!」
まあ、荷物が減って良かった。万博内では日傘を貸し出していると言うくらいだし、雨が降る事もあるかもしれないので一応持ってきたのだ。けれども、日傘を差していると写真を撮りにくいから長袖と帽子にしたのだ。ただ、首の後ろまでカバーする長袖を着ているものの、首の前の方がカバーされていない。考えてみたらパウダー以外の日焼け止めを持って来ていなかった。こりゃ焼けるな。
「とにかくガンダムの前に行って写真撮ろうぜ!」
と、私が言って3人で歩いていると、
「あ、お父さんが今後ろにいた気がする。」
一郎、二郎が言う。もう西の端は見たのかな。どうせなら合流したいが。LINEしたが、返事がないままガンダム前に到着。すると、厚夫が追い付いてきた。
ガンダム。きっと厚夫はこれに感動すると思ったのだが、反応が薄い。厚夫は日傘を差しているのだが、既に暑さにやられている模様。大人しい。
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