第4話 夢洲へ出発
子供らには大体8時に出発だと伝えておいた。8時に支度をして隣の扉をノックすると、一郎は出かけられる格好で出てきたが、二郎はボーっとしている。今起きたところだとか。一郎や、もっと早く起こしてやれや……。
朝ごはんをコンビニで買って、並びながら食べようという一郎の提案に乗り、コンビニに行く事にした。私が化粧などをしている間に厚夫はさっさとコンビニに行って朝ごはんを買ってきて食べたので、私と一郎が先にホテルを出てコンビニへと向かった。
コンビニへ行ったはいいが、何を買うか迷った。サンドイッチか。シュークリームのようなものか。はたまたおにぎりか。やっぱり菓子パン的なやつか。並びながら、という事は立って食べるわけで、サンドイッチはボロボロこぼしそう。菓子パンにしよう。だが、菓子パンは1つが大きくてカロリーも高い。買うなら1つだ。でも、1つじゃつまらない。甘いのとしょっぱいのと2種類食べたい。ああ、二郎早く来ないかな。二郎と半分こするのがいい。と、じっと悩んでいたらやっと二郎がやってきて、
「どれとどれで迷ってんの?」
と聞く。
「これとこれと、これ。でも独りで1つは食べられない。」
私がそう言うと、
「じゃ、これとこれを半分こね。」
と、あっという間に決めてしまった。頼もしい。そして、ちゃっかり飲み物も籠に入れてきて、二郎の分も全て私が支払ったのだった。そうか、買ってもらうから私の食べたい物でいいという事だったのか。まあ、私と二郎の好みは似ているのだが。
そうして電車に乗った。JR線で桜島駅へと向かう。まず京橋駅で乗り換え。調べても発車する番線が分からなかったが、着いてみたらわかった。が、その番線がない。一度階段を上ってみたが、別のホームへ出てからまた階段で。乗り換えの時間が差し迫り、ほぼ走る。だから、体力が落ちているんだってば。男らに付いて行くのにヒーヒーだ。
「お母さん、大丈夫?」
二郎は私を何度も振り返る。可愛いやつじゃ。でもできれば、だれか私の手を引いてくれないかな。無理か。
乗り換えて、最初は立っていたが、その内ボックス席が空いたので座った。すると二郎が、
「あ、印刷してくれたやつ、忘れた……。」
と言った。印刷したやつって……え!チケットのQRコードか。二郎は万博IDを作りたくないと言ったので、入場の際に印刷したものを使用する事になっていた。厚夫は、私が最初に間違った情報で「全員万博IDが必要なようだね」とLINEしたら、「あ、違った」という後の情報を待たずに万博IDを作ったそうで、チケットを譲渡しておいた。それでも印刷もしてあげたのだが。
二郎は今、小さいポシェットだけを持っていて、身軽になっている。つまり、大きいリュックに印刷したQRコードとぴあに載っていた地図をホテルに置いてきたという事だ。
「スクショちょうだい。」
前にもあげた気がするが、とにかくもう一度マイページに……って、混んでいてすぐにマイページに入れないじゃないか。しばらく待つ事にした。そして、やっと入れて二郎のQRコードを表示し、スクショした。やれやれ。しかしあのぴあの地図も忘れたのかよー。
なんだか電車が遅れたようで、アナウンスで10分遅れて到着だとか言っている。なんだかどんどん遅くなるな。そして西九条駅に着いた。ここでも乗り換えだ。
大勢ホームで電車を待っている。
「これ、全員万博行く人?」
厚夫が言う。
「ユニバに行く人もいるはず。」
私が答えた。大阪の人はユニバーサル・スタジオ・ジャパンの事をユニバと言うのだと、万博のボランティアをやった時に知った。私たちはずっとUSJと言っていて、でも時々UFJと言ってしまって、よく一郎から、
「それ銀行だよ。」
と言って笑われるのであった。いやだねー、おばちゃんだ。だから、これからはユニバと言う事にした。そうすれば銀行と間違える事はない。
電車がやってくると、目の前に「女性専用車両」と書いてあった。そういえば足元にも書いてあったのを何となく見ていたが、関東の感覚だと、平日の通勤時間だけが女性専用となるので、目に入っていても気にしていなかった。だが、車両に書いてあるし、どうやら曜日や時間は関係ないみたいだ。
わーっと隣の車両へとなだれ込んだ。混んでいる。ギュウギュウだ。子供も乗っていて、潰さないか心配になる。君たちユニバだよね。万博じゃないよね?
で、ユニバの駅でたくさんの人が降りて、最後の1駅区間はガラガラ。ちょっとホッとする。そして桜島駅に着いた。
「ここ、前に泊まったホテルのとこだよね。」
一郎が言った。そうそう、でも電車の窓からは色々邪魔してホテルが見えない。
ホームに出て、改札へと向かう時、二郎はチャージしなきゃと言ってどこかへ行った。改札を出たところでしばらく二郎を待った。やっと来たので歩き始める。私はバスに乗る前にトイレに行っておきたかった。もし万博に着いてもなかなか入場できなかったらトイレに行かれないから。
トイレは駅にはなくて、探したらシャトルバス乗り場の所にあった。幸い混んでなかったので、すぐに済ませる事が出来た。そうして、やっとこさ9時半頃にバスに乗れた。まあ、9時台のバスを予約しておいたのだから、それほど待たずに乗れたし、良かった良かった。
座れなかったが、バスの時間は15分くらいなので大丈夫。外の景色に家族が興味深々なので良かった。色々と面白い物があるからね。バスが夢洲に入ると、二郎がカラフルなクレーン車が並んでいる事に感動している。すると厚夫も一郎も、工事の様子に興味を示し、理系話に花を咲かせる。理解できないのでスルーしていると、
「これ何作ってるんだろうね。」
と厚夫が言うので、
「IRだよ、カジノの。」
と私が口を挟んだら、
「あー、なるほど!」
3人とも納得。知らずにしゃべってたのか。
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