ギフト『頑丈な肉体』を貰ったので、努力チートで頑張ります〜転生王子のサッカー伝説〜

松下千尋

プロローグ

「はて、一体どうしたものかのう……」

 

 まだ年端も行かない少年、アーノルド・ベルタニア王子の周りを、神と名乗る小柄な老人が悩ましげに歩いている。

 アーノルド王子の目の前には真っ白な雲海が広がっており、王子はその中にポツンとある椅子に大人しく座っている。


(ここが天父様のおまします天の国かぁ)


 アーノルド王子は金色のまつ毛をパチパチと瞬いて、辺りを見渡した。


「すまんのう、君を呼ぶ筈では無かったのじゃよ。ただあの時は寒さが厳しくて、その上戦まで起こっていたものじゃから……。その、儂の手違いなのじゃ。すまんのう」


「いえ!天父様が謝るなんて、めっそうもありません。どうかお頭をお下げにならないでください」


「むう……君は随分と信心深いものだねぇ。ようし、ではその心に免じて、君にもう一度生まれ変わりのチャンスを与えよう」


「生まれ変わり?」


 アーノルドは不思議そうに首を傾げた。


「そうじゃ。君はもう一度別の人間に生まれ変わって、別の人生を生き直すチャンスを与えよう。何がいい?今なら特別にギフトも授けよう」


 アーノルドはうーんと唸り、しばし考えやっと口を開いた。


「それなら……来世は、怪我も病気もない丈夫な体にして下さい」


「それで良いのか?もう少しサービス出来るぞ。もっと欲張っても良いのじゃよ」


「いえ、もう結構ですよ。天父様にこれ以上甘える訳にはいきませんので」


「しかしのぅ。それだと儂の面子も立たんのじゃて……、そうじゃ!そういえばくじがあったのぅ。それを使えば良かったのじゃ!」


 そう言って、神はどこからか『出血大サービス♡』と書かれた赤い箱を持ってきた。


「ほれほれ、気後れせずに一枚引きなされ。出血大サービスじゃぞ♡」


(いいのかなぁ……。)


 アーノルドは内心困惑しながら、くじを一枚引くと、そこにはこんな文字が書かれていた。


『サッカーを好きになる才能』


 サッカー、という謎の単語にアーノルドは首を傾げた。何だこれは。これは果たして良いくじなのだろうか。

 

 アーノルドは神の顔を見ると、何とも微妙そうな顔をしていた。


「えーと、もう一回引き直す?」


「えっ、これってそんなに悪いくじなのでしょうか」


「いや、特に毒にも薬にもならないくじじゃよ。サッカーがと書いてあるだけで、才能を持って生まれる訳では無いからの」


 そう言うと、神は一つため息をつき、


「じゃから、もっとすごい当たりのくじが沢山ある中で、このくじはハズレと言っても良いのじゃよ」


 神はやれやれといった顔で赤い箱の上に腰を下ろした。


「そうですか……。でも、自分で自由に動ける体をもらえて、それでまた何かを楽しむことが出来るのなら、もう文句はありません。これも何かの、天の導きかもしれません」


「因みに天の導きって儂の事なんじゃけど……」


「天父様、どうも有難うございました。この御恩は一生涯忘れません」


 アーノルドがそう言うと、神はくしゃりと顔を綻ばせた。


 次の瞬間、アーノルドは体が軽くなって宙に浮かぶような気持ちになった。体と心が安らぎ、優しい眠気に包まれて目を閉じた…………。



オギャア!オギャア!


??『産まれましたよー。元気な男の子です!』


??『おめでとう、由布子!お疲れ様。それで、名前はもう決めたの?』


どこだ、ここは。


??『ええ、もう決めたの。達哉。一条達哉。いい名前でしょう?』


何を言っているんだ?何語だ?


??『ゴォォール!!0対1!!川崎ブレーブス先制!決めたのは川崎の若き星、一条保!!これで彼のJ1初ゴールです!』


ここがもしかして…………異世界!?

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