第44話 ディオス領を救う覚悟

タカシが領主の館に戻ったのは、陽が沈んでからだった。男爵夫人はタカシをねぎらうが、タカシはきっぱりと依頼を断ると告げる。


男爵夫人は辛そうな顔で「そうですか…。どうしても難しいでしょうか?こちらで協力できることがあれば、何でもいたしますが…」と、精一杯の譲歩を見せた。


タカシはセルマと話した理由を伝える。


「命の選択をしなければならないこと、いつか前のパーティーと同じように仲間を失うことになるのは耐え難いのです」


「無理をしない程度にモンスターと戦ってもらうことはできませんか?」


「夫人、戦うというのは無理をすることなんです。夫人が本当に協力してくれるなら、領地を守ることは可能です。ですが…」


「本当ですか?できる限りの協力はいたします、何でも言ってください!」


タカシは男爵夫人の手を握り、引き寄せようとする。その時、目つきの悪いメイドが二人の間に割って入った。


「無礼な!貴様が気安く触っていいお方ではない!」


タカシはすぐに距離を取り、小さく笑った。


「夫人、先ほど言ったのは本当です。我々は命を賭けて領民を守ります。守り切る自信もあります」


「アーナス様、聞いてはいけません!」


メイドが制止するが、タカシは続けた。


「しかし、この状況で領民を守るのは簡単なことではありません。夫人には最大限の協力をしてもらわなければならない。そのために覚悟を見せてほしいのです。嫌なら嫌でかまわない、我々は退散するまでです」


タカシはそう言い残し、部屋に戻った。夫人は困惑した顔を見せ、メイドはタカシをずっと睨んでいた。


それから2時間後、タカシの部屋のドアが叩かれた。とても小さな音で、寝ていたら気づかなかったかもしれない。ドアを開けると、そこには男爵夫人が立っていた。男爵夫人は小さな声で、「もう少し詳しく聞きたくて…」と言った。


タカシは男爵夫人を部屋に招き入れた。


「『領民を守る自信』とおっしゃいましたが、それはこれ以上被害を増やさないということですか?」


「そうです。そのためには夫人の覚悟が必要なのです」


タカシはそう言って、夫人にキスをした。夫人は驚き、「何を…」と言葉を続けようとするが、タカシは夫人の言葉にかぶせて続けた。


「止めますか?領民を守れるのは、私だけだと思いますよ。多くの領民を守り、一人娘のティアーナ殿下に残してあげる、最後のチャンスではないでしょうか?」


タカシは夫人の目を見つめる。夫人はそっと目をそらした。タカシは気にせずキスをし、ベッドに押し倒した。小さな吐息とともに、夫人の白い肌がピンク色に変わっていった……。

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