魔女と魔杖の異世界冒険譚
かんら・から
プロローグ
第1話 転生
ワシの名はリーン・フォルテ。 世間では『厄災の魔女』なんて呼ばれもしたが、今年でもう132歳になってしもうた。
手足は枯れ木の様に細くなり、もう戦闘なんて無理じゃろうな。 国に寄ってはワシに賞金を掛けておるのもあるし、絶体絶命じゃ。
だが終わらぬ。 魔術を極めたとは言い難く、思い残した事も多い。
そこで思いついたのが一世一代の頂上魔術、『転生魔術』じゃ。 次に生まれ変わるとしたら、長寿で魔術の得意な種族なんかが良いのぉ。
そんな事を考えながら、地面に転生魔術の魔法陣を書き込んでいく。 寿命はどうしよう、千年くらいで良いじゃろうか。
多少の怪我をしたとしても再生できるのが良いのぉ。 それも術式に加えておくか。
保有魔力は特盛じゃな。 少々では傷つかぬ体が良い。 だが魔物になるのは嫌じゃ。 それらも条件に加えるとしよう。
見た目も醜いよりは美しい方が良いのぉ。 もちろん性別は女性じゃ。
悪魔もダメじゃ。 隷属術式の組み込まれた魔法陣で召喚されたら自由がなくなるからの。
おっと、記憶を無くすのはもっとマズイの。 記憶や使用可能な魔術も継承できるようにせねばな。
無一文も嫌じゃから、アイテムボックスも継承できるようにせねばな。
後は…。
◇
ふぅ、やっと出来上がったか。 一週間は掛かったのではなかろうか? もうフラフラじゃ。
最後に術式の見直しが残っておるんじゃが、ワシの生命力が尽きかけておる。 もう限界が近いのかも知れないの。
そろそろ始めるか。 ええぃ、女は度胸じゃ!
「転生魔術、起動じゃ!」
◇
さてワシの渾身の魔術は成功した様じゃの。 はてはて、どんな種族に転生したのやら。
『鑑定!』
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名前 : リーン・フォルテ
種族 : インテリジェンス・マジック・ロッド
性別 : ♀
レベル : 80
耐久力 : 7,600/7,600
保有魔力 : 9,620/9,620
取得魔術 : 流水魔術Lv10、火炎魔術Lv10、疾風魔術Lv10、大地魔術Lv10、雷鳴魔術Lv10、暗黒魔術Lv10、時空魔術Lv10、流星魔術Lv10、回復魔術Lv10、生活魔術Lv10、アイテムボックスLv10
スキル : 高速思考Lv10、並列思考Lv10、鑑定Lv10、詠唱破棄Lv10、気配察知Lv10、気配遮断Lv10、念動Lv10、念話Lv10、再生Lv10、回復Lv10、硬質化Lv10、捕食吸収Lv10
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はぁ? インテリジェンス・マジック・ロッド?
まてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてっ!
ハイ・エルフや竜人は覚悟して追ったが、生物ですらないのか?
いや、それより外見はどうなっておるのじゃ? 鏡、鏡!
何とか念動で移動して、手鏡で姿を確認する。
確かに美しいと言えば美しい。 全体が謎の金属で出来ており、上部は円の四分の三を覆うような形に中央に赤い宝玉が輝いている。
凝った飾り紐なんかも付属しており、高級感の溢れる魔杖じゃ。 それこそ高位の宮廷魔道士が持っていても納得の一品だ。
『おうふっ、美しい』
でも杖なんじゃよなぁ。
どうしろと?
確かに魔術の研究は出来るじゃろう。 念動もあるし、移動も可能じゃ。
それこそ戦闘も可能じゃろう。 しかし魔杖じゃぞ。
興味を持った魔道士に、下手に隷属魔術でも掛けれれたらどうする。
よし、カモフラージュになりそうな魔術師を見つけて契約でもして、普通の魔杖として過ごそう。
いや、魔術師である必要すら無いのだから、そこまでハードルは高くあるまい。
子供なんてのも騙しやすくて良いかも知れん。
よし、当面の目標は決まったな。 都合の良い装備者を探すことじゃ。
それに、今の戦闘能力など色々と調べて置きたいこともあるからな。 そうと決まれば撤収じゃ。
ここは誰も寄り付かない様な山奥の中にあるワシの研究施設じゃが、人が訪れる可能性が無い訳ではない。
こうしていても何も解決しないし、別に引き篭もりたいワケでも無いからな。
どのみち魔術の探求にはフィールドワークも必要じゃからな。 早速旅に必要そうな物を片っ端からアイテムボックスの中にぶち込んでいく。
研究に必要な魔導書や道具類も全てじゃ。 幸いアイテムボックスはカンスとしておるから、ちょっとした図書館なら丸ごと収納できる位には余裕がある。
さて、こんなモノで良いじゃろう。 出発じゃ。
そうしてワシは、自分の研究施設を後にした。
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