(3)月面ベースキャンプの攻防戦

 ゲートが開くタイミングで奇襲をかけたネオ・アマゾネスのアンドロイド達は、ゼリー状の球体から抜け出ると、ビームライフルを連射しながら迫って来た。

 美しいブロンドのロングヘアーを颯爽となびかせる美少女、黒髪のショートヘアーにキリッと涼しい目が精悍な美少女、銀色の巻毛をフワフワと揺らしながら駆けてくる美少女、長い栗色ヘアをポニーテールに結んだ美少女……彼女たちは一様に、色取り取りの可愛いデザインを施したマイクロビキニで局所を隠しビーチサンダルを履いていた。そんな水着のモデルような姿で……しかし全員がビームライフルを抱え、腰にはビームソードを携帯していたのだ。

 ところが皆が皆、へっぴり越しで重そうなビームライフルに振り回されて、今にも転びそうにフラフラと頼りない足取りで駆けてくる。全員が何かに怯えたような面持ちで目には涙をいっぱいに溜めていた。中には恐怖のあまり眉間に皺を寄せて目を閉じている子も多数。どう見ても幼気な少女たちが、無理して、頑張って、すごく嫌だけど仕方なく攻めて来た……という風にしか見えなかった。

 

「総員戦闘開始!」

 

 いつのまにか三人の背後にレアード司令が立っていた。号令がかかるよりも早くアルー、ランス、ルイの3人は三方に駆け出していた。対空アンドロイドが、ゲートに付着して崩れ落ちる前の球体に一斉射撃を開始。アンドロイド兵士も前後左右に散り、球体が溶けて現れたビキニ美少女達へ向けて一斉射撃を開始。普段常備している単発式のレーザーガンではなく、威力を数倍に引き上げたレーザー砲が、敵の頭部を的確に撃ち抜いていった。

 

 ドゴーン! ドゴーン!

「きゃぁぁぁぁぁぁ~やめてぇぇぇ~」

 ヒュン! ドガ~ン!

「嫌~イヤイヤ~ギャァァァァ」

 ガガガガガ、ドゴ~ン!

「あ~ン、痛いよ~酷いわ!」

 ピ! ピ! ピ! ピ! ピ! ピ! キュ~ン、ドゴゴゴゴ~ン!

「オネガイ、撃たないでぇぇぇ~」

 チュイ~ン! ガゴォォ~ン!

「ギアアアアアアア!」

 

 射撃の轟音、ゲートやロビーの壁に被弾する爆発音と共に、少女達の断末魔の叫びがロビー中にこだました。


 最初の迎撃で敵は半数近くに減ったが、迎撃を免れたビキニの美少女達が次々と迫って来た。これだけの人数との近接戦は初体験。まるで水着の撮影会に集まった華やかなモデル達が一斉に剣を振るってガンを連発しているような、その違和感は相当なものだ。

 彼女達は例外無く全員が恐ろしい程に美しく愛らしく、しかし目にいっぱい涙を溜めて泣いていた。同情誘引マックスの可憐な表情で、武装していなければ、男なら誰でも間違いなく手を差し伸べてあげたくなる。とにかく男心をくすぐって誘惑する演出は見事としかいいようがなかった。

 今にも折れてしまいそうな細腕に重そうなガンや剣を携え、おっかなびっくり『今日初めて武器を持ったから使い方がわかんな~い』的な頼りなさでアタフタと駆け回る。しかし、彼女たちのレーザー・ガンはドッグ施設の電気系統や配管などを的確に撃ち抜き、ヘッピリ腰で振り回す剣は連邦軍の精鋭であるアンドロイド兵士達を次々に斬り刻んだ。

 

「オネガイィィ~! ヤ~~ン!」

「ハンス後だ!」

「オッケ!」

 

 ガシュッ! ヒュ~ン!

 

 ルイが叫びハンスが迎えうった。背後からレーザー・ソードを振り回して駆けてきたポインセチアをあしらったビキニを身に付けた美少女は、ハンスの斬撃によって、行き届いたキューティクルで天使の輪が輝くブルーネットの首を飛ばした。

 

「オネガイ、死んで!」キ~ン!

「くっ!」

「ね、死んで!」ガキ~ン!

「ばかやろ~」

「や~ん、怒らないでぇぇ」ガシュ!

「うるせ~!!!」

 

 泣きながら何度も斬り掛かってくるブロンドロング・ヘアーのスタイル抜群な美少女に、アルーはその斬撃を受けながら苦戦していた。

 

 チュィ~ン! チュィ~ン!

 

 見かねたルイがアルーに斬り掛かる美少女の頭部をレーザーガンで撃ち抜いた。

 

「ぎゃぁぁ! 痛ぁ~い、ガフッ……」

 

 ひるんだスキをついてアルーが首を狙って剣を振りかざしたが、狙いが上に逸れて、上顎から上の頭部が吹っ飛んだ。それでも敵は機能を停止するようだ。

 

「粒子バリアをオン! ゲートを閉めろ」

 

 レアードがレシーバーに叫んだ。すぐに、さっき場内放送をしていた女の声で返信が返る。

 

「粒子バリア起動しました! しかしゲートは……シップがまだ入港完了していません!」

「構わん! すぐに閉めるんだ」

「了解!」

 ガッゴ~ン……ゴゴゴゴゴ!

 

 ドック管制塔の女性兵士はレアードの命令どおりゲートを閉じ始めた。

 

 ゴゴゴッゴ、ゴッゴ、ガガ~ン!

 

 スペース・シップは閉まるゲートに最後尾をひっかけて大きく船体をうねらせたが、そのまま入港を終え辛うじてドッグ内に着陸した。

 

「よし! ドッグ内の敵を殲滅せよ!」

 

 潜入時の迎撃を生き延びた敵のビキニ美少女アンドロイドは10名。ハンス達3人はそれぞれ一人を相手にレーザー・ソードで応戦していた。他の7名は斬撃でアンドロイド兵士を次々と斬り刻み、レーザーガンを乱発してドッグの壁や着いたばかりのスペース・シップの装甲を爆破していた。

 

「くっそ~ドッグが破壊される! 他の部所からの応援はまだか? シップ内の補充兵は起動出来んのか?」

「無理です! 搬送モードのロックを解除しないと起動しません! キャァァァ」

 

 ドドーン!

 一瞬で猛火に包まれ管制塔が爆破された。

 

(まずいぞ……まさか……このままではヤられる……)

 30名にも及ぶ敵のビキニ美少女アンドロイドの奇襲を受け、半ばあきらめかけたレアードはその時、スペース・シップの装甲に被弾して開いた穴のひとつから、レーザー・ソードを手にしたブロンド・ロングヘアの女性兵士が、大型の厳ついサーフボードの様な『ホバー・バイク』に乗って飛び出してくるのを目撃した。

 

 ガシュン!

「ぎゃぁぁぁ!!」

 ピシュン!

「や~ん、いったぁぁぁぁい」

 ヒュン!ドガッ!

「いやぁぁぁぁぁ!」

 

 彼女はホバー・バイクを自在に操り猛スピードでドッグ内を飛び回ると、またたくまに3体の敵アンドロイドの首を跳ねた。

 次にひと際高く上昇すると敵の頭上から襲いかかる。長く美しいブロンドの髪が金色のマフラーのようになびいている。

 

 ガッ!

「何よ~やめてよぉぉぉ~オネガイィィ」

 ガシュッ!

「きゃぁぁぁぁ~……アアア」

 ドゴ!

「痛ーい!」

 

 敵アンドロイドが放つレーザー・ガンの光弾の雨を巧みにかわし、続けざまにもう3人の首を飛ばした。更にそこから急旋回し、ビキニ美少女と戦うハンス、アルー、ルイの方へバイクを向け、床から1メートル浮いた所で宙に静止すると、力強いアルトの声で叫ぶ。

 

「伏せなさい!」

「え?」「は?」「なに?」

 

 ドガガガガガガガガ!!!

「ぎゃぁぁぁ~やめてぇぇぇぇ」

「や~ん、ぐあぁぁぁぁ!」

「ぎゃあああああ!いったぁっ~いぃぃ」

 

 間一髪! アルー達3人が上体を屈めたのと、ホバー・バイクのガトリング・ビーム砲が炸裂したのはほとんど同時だった。その砲弾は一瞬にして3人のビキニ美少女の顔を蜂の巣にして頭部を粉砕した。

 

「あと1人」

 

 そう呟くと彼女はホバー・バイクで床を滑るように疾走し、泣きながら剣を振り回してレアードに迫ってくる黄色いストライプのビキニを付けた栗色巻き毛のロング・ヘアーが可愛い美少女アンドロイドの背後に迫った。追いついたと同時にレーザー・ソードの鋭い太刀が真横になぎ払われた。

 

 ガシュン!

「えー……いや~ん」

 

 アンドロイドの首がクルクル回転しながら宙高く舞い上がり、巻き毛がクッションになって床にふわりと落ちた。

 

「やだもぉぉぉ……痛いって……バァァァァ……イィィ……ヤァァ…」

 

 床に落ちた首は機能停止ギリギリまで断末魔の文句を言い続けた。首を失った体は切り口から噴水のように赤い液体を噴き出しながら不気味に揺らいで倒れた。

 床に伏せたままだったハンスとアルーとルイは、きょとんとした目付きでホバー・バイクの女兵士を見守っていた。

 

 プシュゥゥゥゥ~~。

 

 ホバー・バイクは床に着陸すると排気の抜ける様な音をたててモーターが止まった。彼女はバイクを降りてレーザー・ソードのスイッチを切った。美しいブロンドのロング・ヘアをサラッとなびかせ、切れ長で二重まぶたの大きな瞳、雪のように白くきめの細かい肌、連邦軍の制服を着ていても隠しきれない豊満なバストと細く閉まったクビレが織りなす抜群のプロポーション。その美貌はネオ・アマゾネスの美少女アンドロイドにもまるで引けを取らない、いや、それ以上に美しい少女だった。彼女は3人の方へ近づいてきた。

 

「怪我はないか?」

 

 まるで愛想の無い真顔で笑顔を見せる事も無く、彼女は事務的な口調で3人に話しかけた。

 ハンスとルイは、いきなり現れて敵をたった一人でほぼ一瞬のうちに全滅させたこの美少女に驚いて言葉が出ない。しかしアルーは……あろうことか、レーザー・ソードを投げ捨てるとレーザー・ガンを構え彼女めがけて発砲したのだ。

 

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