第25話 突然の入部機希望者現る

鎌倉幕府が滅んだ。


滅ぶという言葉は残酷すぎて加奈子には重すぎる話だった。


「茜さん、なんかもっと明るい話はないですか?


なんか私、聞いてたら寒くなっててしまって・・・。」


可南子は本当に寒気がしてきた。


頼朝の立派な立像もどこか虚しく感じる。


「そうね、この近くに銭洗弁財天があるの。そこでお金を洗えば金運倍増!って話よ」


お金を洗う?


「中にはお札を洗う人もいるのよ」


「お札~! 破れないんですか?」


「そうね、洗うというより、濡らす?だけかな。もちろん、乾かしてからお参りすんだけど」


「私、お金洗う!お札はもったいないから500円玉を洗って、500万円にしてやる!」


「おいおい、紀代、急に元気!現金な女(笑)」



私たちは休憩を終えると、さっそく銭洗弁財天へと向かった。


そこに一人の青年が話しかけてきた。


「すいません、ぼく西野。西野達也です」


だ、だれ?

私はびっくりしたが、


「あれ?どこかでお会いしたような・・・・」


思い出した。


「あ、大学で以前、茜さんのことを聞いた時にいた学生さん!?」


「あ、そうです」


「なんで、西野君がここにいるの?」


「もしかして、茜さんの後をついてきた?」

「こわ~い!ストーカー!?」


「違います!違います!ぼくも山岳部に入らないかって茜さんに誘われて、

迷ってるうちにGWになってしまい、野口先輩に聞いたら、ここに行くって聞いて。

ここ、僕の地元なんですよ。それで、ルート聞いてましたので、ここで待ってました!」


「すいません、ルートってなぜ知ったの?」

私は聞いた.


「あ、野口先輩が教えてくれたんですよ」


「あー、そっかぁ。私が野口君に教えたんだっけ。一応、部活なんで、

ルートは事前に報告するのは鉄則だからね。ま、ここで遭難はしないと思うんだけど、一応、野口君には報告しておいたの。忘れてたわ・ふふふ」


「ということで、ここからは女子+男子一人でお願いします」


西野君はぺこりと頭を下げた。


先輩ならともかく、同学年の男子は、私はまだ緊張する。


紀代はなんかルンルンしてきたようだった。


私たちは4人でここから歩くことにになった。


銭洗弁財天は、銭洗弁財天宇賀福神社というのが正式名だ。


岩をくりぬいた様に参道が続き、開けたところに大きな洞穴があり、


その中に池のような水たまりがある。覗くと沢山の小銭が沈んでいた。


そこに設置されてるザルにいくらかの小銭を入れ、ザルを水につけ、

揺らしてみた。小銭はすぐに乾く。


それを隣に建ってる祠に、お賽銭として投じた。


「なんか金持ちになったような気がした!」


西野君は無邪気に笑っていた。


なんか意外と可愛いかも。


「ここの団子は上手いよ」と言いながら、茜さんは4本買って、

2本を私たちにくれた。


「ありがとうございます!」


私たちはお団子をほおばった。


「なんかこんなに美味しいお団子は初めてだ。お茶も頂き、なんか日本人っていいな!と西野君が言った。


「あれ?地元民じゃないの?」紀代が聞いた。


「いやぁ。僕、こう見えて洋菓子スイーツ好き男子で、こういう地元のお土産とか食べないので、盲点でした!」


「わかるわかる~。私も宮崎なんだけど、青島とかそんなにいかないし、神話の故郷って言っても、あんまり知らないのよね~」


なんだなんだ?妙に気が合うな、この二人!


「少し休んだら、一気に大仏様まで行くよ。ノンストップ!覚悟して!」


茜さんがそんなゆるい空気を打ち破るように言い放った。


「大仏って、あの大仏?近いの?ここから?」


「そうね。で、ルート変更するわ。ここから山道いくから覚悟して!」


ランチは大仏まで歩いてからに変更された。


とにかくここからは山って感じになってきた。


「そっか、もうそこまで来たんだ」


少し重くなった足に、もう一度気合を入れて、歩き出す。


しばらく広い道が続いた。


この後、道とは思えないような道に出るとは!


スイーツ男子の西野君が早くも悲鳴をあげた。




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