第11話 茜は印度哲学科

さっそく、私は紀代と一緒に茜を探すことにした。


といっても、あてがない。


どうする?


「茜さんって、確か文学部のインド哲学科だったわよね? 関連する授業やってるクラス探して、そこの人に来てみようよ!加奈子!」


わ、すごい!紀代は茜さんの復学の手続きをしっかり見ていて、学科名まで見てたのか!凄いわ!それに引き換え、私としたらぼんやりしてて学部の名前さえ気が付かなかった。とほほ。あら、いやだ!私まで西城先輩の口癖がうつっちゃった!


大学の校舎の中に中庭があり、そこに大きな掲示板が立っていた。

そこには今日の授業と教授の名前が記されていた。


「ねぇねぇ、加奈子、インド哲学ってどんな授業やるのかしら?」


え?わかって言ってんじゃないの?私だってわからない。


「すいませ~ん、この辺で哲学科の人、知りません?」


あ、素早い!もう人に聞いてる!人見知りの私には到底まねできない芸当だわ・・・。


ひとりの青年が声をかけてきた


「あの~、僕、哲学科です。」


「え。ほんと?あの、溝口茜さん知ってますか?」


「う~ん、知らないなぁ。何年生?」



「えっと、2年生なんですけど、休学してたのでホントは3年生です。でも今は2年生。」



「僕は1年なので、先輩に聞けば知ってる人いるかも。ほら、そこの教室。たぶん、3年生以上の人が受けてる『ギリシャ哲学考察』そこの生徒だったら知ってると思うよ。3年生だったらたぶん。なにせ、哲学部は40人しかいないから、一学年で。」


「ありがとうございます!」

私たちはその青年に深々とお辞儀した。


「よかったね!加奈子!たぶん、これで手がかりがつかめるよ!」

「うん!」


待つこと30分。授業が終わり、学生がぞろぞろ出てきた。


「すいませ~ん、誰か溝口茜さんを知ってる人いませんかぁ?!」


わ、!紀代、まさか全員に話しかけるようにそんなに大きな声で!

こっちが恥ずかしくなる!


しかしなぜか、みんな目を背ける様に、すたすたといってしまった。


そんな時、


「あのぉ。」


メガネをかけた理知的な女性が話しかけてきた。


「知ってますよ。溝口茜さん。彼女が何か?」


知ってる人発見! なんかわかるかも!


しかし、結果は増々、迷宮入りしてしまうような答えだった。


実はその女性は大学の准教授だった。

1年生の時に、ゼミの生徒で、茜さんのことはよく知っているとのことだった。

しかし、去年、休学すると言って、そのあと会ってない。

復学する時はゼミに戻ると約束していたが、まだ彼女から連絡がないとのこと。

逆にこちらが聞きたいと言われた。


なぜなら住所も電話も現在使われていなく、連絡が取れなくて困っていると言う。


「そう、彼女、復学したの。じゃぁ、もしかしたら、私の所に連絡がくるかも。ありがとう、教えてくれて。」


あー、これでは反対ではないか!こっちが連絡ほしいのに!


「♪♪♪~」


その時、西城さんからのメールが紀代に届く。


「あ、野口さんが部室に戻ったので、とりあえず戻れ!だって!加奈子!」


「いつの間に、西城さんとメアド交換したの~?」


相変わらず、紀代の素早さに感心する加奈子であった。


部室に戻ると、野口さんがはぁはぁ言っていた。


茜さんの姿は見えなかった。


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