第7話 謎の女性、茜、現る

「加奈子ちゃんと、えっと、き、き」


野口先輩が照れくさそうに聞く


「紀代です!」


「あ、そうそう!紀代ちゃん!悪いんだけど、これから俺バイトで、行かなくちゃいけないんだ。」


西城先輩も続ける


「あ、おれも次の授業、絶対出席しないと落第というか8年生なんで退学になってしまうから、入部の手続き、悪いんだけど、加奈子ちゃん、代理でやってくれないか?」


え、どうしよう!どうやって?書類はどこ?

私は戸惑った。まだ何もわからない!


「部室の角の所、奥ね、そこに引き出しのあるキャビネットあるから、その1段目に書類あるよ。で、ハンコは2段目。名前書いて、学部長に提出しておいてくれない?あ、たぶん、加奈子ちゃんの書類もまだ提出してないので、一緒にお願いします!」


野口さんが的確な指示を出してくれた。

なんか頼りになる。



2人に頭を下げられてはしょうがない。


「分かりました!なんとかします!」


幸い、私と紀代は、午後からフリーだった。


「じゃぁ、部室に行こうか」


私は紀代を誘った。


「いぇーい!」


なんともノリがいい。


山岳部の部室は、第2校舎の半地下にある。

この半地下には、各クラブの部室が並んでおり、ドアの前には各部活の道具やらなにやらおいてあり、雑然とした感じの通路が続いている。

その通路ずっと歩いてゆくと、一番奥が山岳部の部室だった。

やはりドアの前にはいろいろなものが雑然と置かれていた。

部屋に入ると、山岳部らしく、ザイルや登山靴、ピッケル、使い古したリュックなどが所狭しと、部屋の中に置いてあった。


「えっと、キャビネットでどこにあるのかしら?角にはないよね?」


物が多すぎてわからない。二人で手分けをして探した。


その時、ドアが開いた。


「誰?そこで何してるの?」


え?、誰? 女性?


「私、植田加奈子、あ、1年生です!」


すると、その女性が言った。


「2年生の 溝口 茜(あかね)」



2年生? もしかして、先輩の云ってた人って、この女性?

風貌からは山岳部ぽくはなかった。だぶだぶのデニムにシャツ、髪型はポニーテール。そしてなぜか、サンダルだった。ペディキュアをしていて、バリバリオシャレな雰囲気の女性だった。


「今、何してたの?」


「あ、私たち、今年から山岳部に入った植田とー」

「山口です!今日からよろしくお願いします!」


私たちは思わず気をつけの姿勢をとってしまった。


「あー、そっか。君たちが。でも、西城さんからは一人って聞いてたけど?」


紀代が慌てて答える。


「あの、私は今日、入ったんです!で、入部書類を探してて!」


「なんだ。それならここだよ。」


茜はドアの外を指さした。


部室の中ではなく、外にキャビネットが置いてあった。


なんだ!


「たぶん新人募集のために、いつでも入部してもらいたくて、キャビネット出したんだろ。ハンコも入ってる」


なんか物騒だなぁ。ハンコも外に出しっぱなしなのか。

でも、この溝口 茜さんという女性。

なんで、急にここに来たのか?

休学してたって聞いたけど。




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