過去書いたものまとめ
藤堂タイラ
お題【友】
子供のころ、どこからか引っ越してきた子がいた。同い年くらいの男の子で、名前だけはどうしても思い出せない。
学校には行きたくないんだ。そう言う彼のために、俺は学校での出来事をたくさん喋り、毎日暗くなるまで一緒に遊んでいた。
彼と遊ぶようになってから、もともと遊んでいた友達とは遊ぶ機会がなくなっていった。彼といる俺を見て気持ち悪い、頭がおかしいと馬鹿にした。
家でも彼の話をするようになった。今日何をして遊んだとか、彼の好きな食べ物が俺と同じことや、二人で取り組んだけど分からなかった算数の宿題の話。そんな子、この町には住んでいないでしょう。ううん、ちゃんとこの町にいるよ。いいえ、この町は子供が少ないからお母さんちゃんと覚えているわ。そんな子この町にはいないわよ。
数年後、両親の離婚が決まり、俺は父親に連れられる形で彼のいる町を出た。離婚の理由ははっきりとは覚えていないが、母が俺のことを気狂いだと言い始めたのがきっかけだったと思う。
引っ越し当日、別れを惜しみながらみんなと撮った写真を、久しぶりに自室の荷物の中から掘り返してみる。顔を見れば彼の名前を思い出すことができるかもしれない。写真はあんまり好きじゃない、と嫌がる彼を無理やり誘って腕を組んで撮った写真もあったはず。
淡い期待を持ち、荷物の中から掴み取った彼との写真を俺は目の前にかざして見せた。不自然に誰かと腕を組むようなポーズで映る俺の写真を。
過去書いたものまとめ 藤堂タイラ @Taira1844
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