第7話 スローダイス
じゃあ、とりあえず様子見でチップ1枚を賭けて、皿に目掛けてダイスを振ってみる。皿の中でダイスが音を立てて回っている。結果は3・5・5、合計13か、良くも悪くも無い数字だ。とりあえず、もう1枚掛け金を上乗せして終了した。
「ケッ、ちまちました賭け方しやがって、威勢が良いのは口だけだな」
オーガが悪態をついて、その大きな手の平で皿の中のダイスを掴みとり、勢いよく振って見せる。2・3・8の合計13
合計数字は一緒だが、相手に8の目が出ているのでこちらの負けだ。
これで残りのチップは48枚。
「はっケチな性格で損が少なくて助かったな。じゃあ今度は俺の番だ。
とりあえず3枚賭けるぜ」
あんたの事だから10枚くらい賭けるかと思ったが、そこまで馬鹿じゃなかったか
「当たり前だ、1投目の結果を見て上乗せ出来るんだ。流れも何も分からない1回目で大金を賭けるメリットはほとんど無い。まぁ終盤になったら、そんな時もあるだろうがな」
オーガは得意げに言いながら、ダイスを振る5・7・8の合計20、かなり良い数字だ。
「じゃあ3枚の上乗せだ。降りてもいいぜ。」
俺は無言でチップを3枚上乗せして、ダイスを振る。2・1・4の合計8、2桁にもならない。惨敗だ…のこりチップは42枚
俺は再び1枚賭けて、ダイスを振る。4・5・6の合計15、チンチロリンなら倍付けなんだか、スローダイスのルールでは平凡な数字だ。とりあえず1枚上乗せして終了だ。
そしてオーガの手番だ。結果は2・5・8の合計15。またもや合計数は同じだが、8の数字があるオーガの勝利だ。
「ハハハハ!数字じゃ負けてないのに、流れが無い証拠だな。だが、途中で降りる事は許されないぜ。持ち金が尽きるまでは続けてもらうぜ。」
これで残りチップは40枚。
「じゃあ、今回は5枚といこうか。」
オーガのダイスの目は4・5・8の合計17
「まぁそこそこだが、今は連勝中で流れが良い。5枚上乗せさせてもらおう。自信が無いなら降りても良いぜ。ただ、そんな調子じゃ絶対逆転なんか無理だろうがな」
下手な挑発だが、もともと降りるつもりは無い。俺はダイスを振った。
結果は2・4・7の合計13 これでチップは残り30枚まで減った。
「おいおい、もう金を置いて帰った方が時間を無駄にしなくて良いんじゃないか?お前見たところ、ここら辺の者じゃないだろ。そんな輩がこの国で良い目を見ようなんて100年早いんだよ!」オーガは勝ち誇ったように吐き捨てる。
ちょっと休憩だ。心配するな逃げやしない。手洗いはどこだ。
オーガは顎でしゃくって
「アリス、お前、やつが逃げないように見張ってろ」と指図した。
用を足した後、俺は思案を巡らせる。
オーガの奴は何かやっている。イカサマかどうかは分からないが、自分が有利になる何かを…
奴の表情は勝つか負けるかの緊張感がない、7~8割勝てると踏んでいる顔だ。そして、多分それはダイスに細工がしている可能性が高い。今までの奴のダイスの目は『2・3・8』『5・7・8』『4・5・8』常に最高値の8が入っている。片や俺は3回振って一回も8が入っていない。もし自分の投げる際に8が必ず出るダイスを一つ使用しているとすれば、勝率は7割~8割になるだろう。あの大きな手の中ですり替えているのだろうか?とすると攻略法は
「兄さん…大丈夫なのかい?」
アリスが心配そうにこちらに見ている。
なんだ心配してくれているのか?余計な事を言うと親方にどやされるぞ
「あんな奴、もう親方でも何でも無いよ!どっちにしろ売られる身だしね。」
それなら、アリス一つ協力して欲しいことがあるんだ。上手くいけば、お前も売られずに済むかもしれない。
「本当かい?だったら何でもするよ」
本当に何でもするか?じゃあ、俺の荷物の中にお前の今まで貯めた全財産を入れて置いてくれ。最後の勝負に使わせてもらう。俺を信じられるか?と念を押すと、アリスは目を見開いて力強く頷いた。
俺は再び勝負の場に戻った。
ギャンブル無双 ギャンブルしか取り柄の無い俺が、異世界で国を手に入れるまで 姉帯鴉 @anetai
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