第4話 僕が僕らしくある為に

翌日、僕は昔好きだった古着屋へ行った。

いつからか行かなくなってしまった店。

まだあった。ロックが好きなオーナーがセレクトする店だった。


時短の為に、服はオンラインでしか買わなくなっていた。だから店舗に足を運ぶのは何年ぶりだろうか。僕が知っているトレンドとはかけ離れたラインナップ。久しぶりーとあの時よりも歳をとったが店主は僕を覚えていた。

音楽の話をして、昨日観たばかりのライブの話を興奮気味にした。店主にそれがよかったなら、これも聞いてみたら。とCDを貸してもらった。

僕は、他人の意見ではない僕がかっこいいと思った服を一式購入して、借りたCDと共に店をでた。 


自宅に帰り、もうずっと使っていなかったCDプレイヤーにCDを入れ音楽をかける。

購入した服を纏って鏡の前に立つと、好きなものを纏った自分が誇らしくなった。明日はこの服装で出社しよう。僕が僕らしくある為に。



______________


朝。目が覚めて、あの服に袖を通す。いつも着ていた"デザイナーおじさん"の服は綺麗に畳んでしまった。


好きだった甘いカフェオレを飲んでから

自転車には乗りづらい服装だから、少し早めに出て歩いて出社する事にした。



________


渡辺「おはよう!お前どうした!すごいなその服装」


渡辺の服装は"デザイナーおじさん"に戻っていた。周りもみんなシンプルで機能的な服装に戻っている。


渡辺「イメチェンかー?いや、でもいいよ。すごい似合ってるわ」


素直に嬉しかった。僕が選んだものを他人に認められた。

その日はジロジロ見られるし、この街で一層浮いてしまっていた。


でも、不思議と嫌な気はしなかった。

たとえ変だと言われてもいい。

自分が好きなものを好きだと言うこと。

自分が好きな服を着るということ。

自分が好きな曲を聴くこと。



誰かに造られたスタイルを纏うより

自分で選んだ物が美しいのだから。



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