避難訓練

「天海さん、私〇〇君が好きなんです。でも勇気が出なくて。決して結果が怖いというわけではないんです。もちろん成功したいし

失敗であったとしてもそこは納得します。でも告白する勇気が出ないんです。どうすればいいんですか」


どうやら彼女には好きな人がいるらしいのだが告白に対しての勇気がないらしい。


「ちなみにですが、告白することは決めているんですか」


私は一応聞いてみた。


「はい。いつかは告白したいと思っています。方法は決めていませんが」


なるほど、方法は決まっていないのか。ならあの方法が使えるのかもしれない。


「そうですね。ならもしも作戦といきますかね」


「天海さん、もしも作戦ってどういうことですか」


彼女はまっすぐに質問してきた。


「もしも作戦とはですね、もし〇〇だったら付き合ってくださいというテンプレみたいなやつですね。


もしもこのシュートが入ったら付き合ってくださいとか、もしも甲子園に進んだら付き合ってくださいなどのもしもこれを達成したら付き合ってくださいというやり方です」


まぁ告白においてありきたりな言い回しだ。


「私から一つこのパターンの方法を伝授しようと思うのですがいいですか」


彼女はうーんっと独り言をつぶやいてからお願いしますと言った。


「ちなみにですがもしも手紙で告白をしようと考えているのならこの方法は使えません。あくまで本人に声をかけて行ってください」


彼女は告白の結果に対しての良し悪しは気にしていないといった。そんな人はあまりいないのだが彼女にとっては告白できない自分自身に悩んでいるのだ。


「近々避難訓練が行われます。火事に対しての避難訓練です」


「避難訓練?それが告白に対してどう関係するのですか」 


彼女は聞いてきた。そりゃそうだ。普通に考えれば関係ない。 


「火事を想定した避難訓練では火災場所が決められます。大概が調理実習が行われる家庭科室か食堂です。稀に理科室の場合もあります」


「はい。そうですね。家庭科室とか食堂とか理科室とか火が使われるであろう場所が火災現場に設定されやすいですよね。でもそれがなにか」


「その子にこういうのです。もしも今度の避難訓練で火災場所が理科室だったら付き合ってくださいと。理科室はレアですからね。


相手はそう言われてなんていうでしょうかね。この人何いっているんだと思われるかしれませんね。でも分かったというと思いますよ。おそらくね」


分かったという根拠はないのだが一応言っておく。これでも私はこの学校では少し有名な自称占い師なのだ。


「ちなみになんですが、一つ聞いても」 


「どうぞ」


「私は勇気が欲しいのです。この方法ではもう告白してしまってるではないですか」


確かに彼女のいう通りだ。もう告白してしまってる。 


「はい。ただですね、これを冗談っぽくふざけた感じで言えばいいのですよ。そうすれば相手も冗談かとなりますから。まぁやるかやらないかはあなた次第ですよ」


冗談っぽく言えば相手に本気と思われないリスクもあるが、彼女の冗談っぽい告白が嘘か本気で言っているのか悩む可能性はある。


もしあれが本気だったらどうしよう。いいよって言ってしまったからな。付き合わないとなと思うかもしれない。


もしくはあれ冗談だよね。僕は(俺はかもしれないし私はかもしれないが)君のこと好きじゃないから付き合えないなんてストレートに言われるかもしれない。


しかし彼女の今回の悩みは告白する勇気が出ないことだ。結果ではない。


その後彼女は何やら納得しない状況で部屋を出ていった。



「お嬢様、今度の避難訓練の火災場所なのですがお嬢様の希望通り理科室になりましたことを報告します」


如月がそう伝えてきた。


「ありがとう如月。でもね、別に私は火災場所は理科室がいいなんて言ってないと思うのだけど。彼女のために理科室がいいと言っただけだけど。まぁいいわ。予定通りってことね」


「はい。それにしてもユニークな方法ですね。もしも避難訓練の火災場所が理科室だったら付き合って下さいとは。他に聞かないやり方です」


「だからいいのよ。私はあくまでユニークな占い方法を告げる自称占い師なんだから。当たるか当たらないかなんて二の次よ。それに今回彼女は成功しても失敗してもいいと言っていたんだから。勇気が出る方法をおふざけなやり方で示しただけよ」



「私〇〇君と付き合うことになりました。天海さんのいう通りにもしも避難訓練の火災場所が理科室だったら付き合ってって言いました。そしたら彼笑っていました。いいよって。


結果的に避難訓練の火災場所は理科室になったので、避難訓練終了後に彼から理科室だったね。付き合おうって言われました。天海さんのおかげです。ありがとうございました」


彼女は礼をするとスキップをしながらその場を離れた。



「お嬢様。やはり彼女に対して彼が少なからず興味があるって情報は間違っていなかったですね。ワタクシお嬢様に嘘を伝えていなくてホッとしています」


「如月。その情報源は間違っていなかったと私は思っていましたよ。だって如月からの情報ですから。私は如月を信頼しているんですよ」

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天海沙羅は自称占い師 命野糸水 @meiyashisui

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