マッチ売りの少女

まっちゃん

第1話 マッチ売りの少女

 少女がマッチを擦ると、不思議なことに、目の前の暗闇に暖炉が現れました。凍りつきそうな指先から痛みが取れました。

「あぁ、なんて温かいの…」

 少女は次々にマッチを擦りました。目の前には、ガチョウの丸焼きをはじめ、美味しそうなごちそう、綺麗なクリスマス・ツリーが現れました。やがて少女は気づきました。

 「この香りは…」

 そう、それはあの優しいおばあちゃんがお出かけの時につけていた、いい匂いがする香水だったのです。

 「おばあちゃん?」

 おばあちゃんは軽くてふわふわの毛布を少女に掛けながら言いました。

 「寒くて辛かったろう。さぁ、安心しておやすみ。」

 「うん…」

 少女はおばあちゃんに優しく抱かれながら空に登っていきました。


*****

 ピッ

 「アンドロメダ銀河行き E0957号。地球生体ユニットに対し、データナンバー13の再生が完了しました。」

 「少女の体験?なんでまた?」

 「第三惑星からきた生物のほとんどが、『これ』を体験しながらコードスリープに入ることを望むのです。…不可解ですが、要望が多すぎてデータ化した程です。」

 「理解できんな。」


 宇宙船は、今日も漆黒の宇宙を進んで行く。


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(2025.10.05 了)

セルフ三題噺「凍る」「香水」「軽い」

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