夏祭りのひととき

@heyemou

彼女とりんご飴

夏祭りなんて、来たのはいつぶりだろう。

屋台の明かりが暗くなる夕暮れに照らされ、浴衣姿の人たちが行き交う。僕らもその中を歩いていた。


「私、りんご飴食べたーい!!」

彼女が目を輝かせて叫ぶ。高校生の僕らにとって、こんなに単純なことでここまではしゃげるものなのか、と少し不思議に思った。

でも、可愛いから何でもいいや。


「りんご飴、好きなの? 10個くらい買っとく?」

「そんなに食べれるわけないでしょ、バカ!」

軽く腕を叩かれる。その弱々しい力加減が、彼女といることのリアルを思い出させてくれる。


屋台でりんご飴を買うと、彼女は大きな飴を小さな口でかじりながら、反対の腕で僕の腕を抱き込んできた。

突然の距離感に、僕は少し戸惑う。


いや待て、肘が彼女の胸に当たっていないだろうか。初めて見る浴衣姿に意識してしまう自分がいる。

やばい。この子、めっちゃ可愛い顔してる上に、すごく…エッチな体してる。変な気起こしそう


「あのー、ちょっと可愛すぎてドキドキしちゃうので、離れてもらえますか?」

思わず口に出してしまう。


「やだ!」

彼女は笑顔でそう言い、さらにぎゅっと腕を巻きつけてきた。


僕は心の中で少し混乱しながらも、胸の奥がじんわり温かくなるのを感じていた。

今日ここに来てよかった――そう思わずにはいられなかった。

祭りのざわめき、りんご飴の甘い匂い、彼女の笑顔。すべてが、今この瞬間だけの幸せだった。

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