第25話 アルリオン氏族の氏族長
どれくらい時間が
私は、黙って湖の上を――クオン殿を見つめていたが、クオン殿がそっと目を開け、湖畔で立ち尽くす私に、その神秘的な水色の瞳を向けてきた。
「――――すみません、リヒトさま。どうやら、お待たせしてしまったようですね。」
「いえ、こちらこそ、いつもお時間をいただきありがとうございます。」
私は我に返って、クオン殿に返事をする。
「ふふっ。リヒトさまは努力家ですね。普通の人であれば、とっくの昔に諦めています。」
クオン殿が
「――――私は、諦める訳にはいかないのです。私は、我が種族を滅びの運命から救ってみせます。そのためには、例えどのような壁が立ちはだかろうと、ただ歯を食いしばり、その壁を乗り越えるまでです。」
「…………ご立派ですね。何だか、もう約束なんてどうでも良くなってしまいそうです。」
クオン殿は、困ったような顔をしながら
約束とは、当然、風魔法に関する戒律の話である。
私はクオン殿に、ジン殿にしたのと同じく、2つのお願いをした。
1つは、殺傷目的による風魔法の行使を禁止する戒律について、氏族長会議で廃止に賛成して欲しいという内容。
そしてもう1つは、飛竜と同じく、
この2つである。
そして、クオン殿から返ってきた条件が――
「あの日交わした約束。リヒトさまが
「ええ、片時も忘れたことはありません。」
アルリオン氏族にとって――そして氏族長であるクオン殿にとって、
クオン殿は、我々エルフが置かれている状況を大変に
しかし、アルリオン氏族長として、いくら私が同格の氏族長だとしても、
私は、
そのため、ダートネス氏族との接近を優先し、アルリオン氏族との接近は後回しにしてきた。
しかし、ダートネス氏族との秘密同盟が成立したことを受けて、次なる課題として、アルリオン氏族との接近を図ったのだ。
だが――
「まさか、飛竜を完璧に乗りこなすと噂されるリヒトさまが、
「――――――
つまり、そう言うことである。
私は、飛竜の騎乗センスがあったのか、はたまた専属飛竜であるサリアとの相性が良かったのか、飛竜については初日から騎乗に成功することができた。
ここまでセンスが良いやつは、リヴィアと私くらいだと、ジン殿から直々にお墨付きをもらったくらいだ。
そのため、正直に告白すると、
その考えは、
それからというもの、この3年間、少しでもまとまった時間ができればクオン殿の元に通い、
その甲斐あってか、ようやく騎乗自体はできるようになったものの、クオン殿の求める水準には達することができていない。
これまで9回の修了試験に挑戦し、その全てで落第してきた。
情けないことに、今日が記念すべき10回目の修了試験という訳だ。
「クオン殿。今日こそは、必ず合格して見せます。どうかお時間をください。」
「もちろん、そのつもりです。リヒトさまの努力は、私が一番よく知っています。だから今日こそ、リヒトさまが合格することを祈っています。あなたの進む道に、世界樹の追い風があらんことを。」
クオン殿は、優しく微笑みながら、エルフ社会でよく使われる慣用句を用いて、私を励ましてくれた。
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