英雄の凱旋


 陸表の命を受け、北方の領地を狙う敵軍と交戦していた王飛が都へと帰還してきた。

 此度の戦でも大いに活躍し、敵兵を蹴散らし、敵総大将の首級をあげた王飛。その武勇は既に都へと届いており、人々は国の英雄の凱旋を祝うのだった。


「お帰りなさいませ、王将軍!」


「我らが英雄、王将軍!」


「王将軍、王将軍!!」


 都の大通りを城へと向かい馬で進む王飛を老若男女が声を上げて讃える。


「兄上、民の声に応えてあげなされ。民を喜ばせてやるのも将軍の務めですぞ」


 弟にして副将の王凱オウガイにそう言われ、王飛は気恥ずかしさを我慢して微笑みを浮かべると馬上から民達へ手を振った。

 それはぎこちない笑みであったが、あちこちから黄色い声が上がる。


「王将軍、なんて美丈夫なのかしら」


「ああ、あんな立派な殿方はそうはいないわ。憧れちゃう」


 これを聞いた王凱が小さく笑う。


「兄上は私と違い女性にょしょうに大変好かれる。そろそろ側妻そばめを持ってはいかがでしょうか?」


「凱、冗談にしても面白くないぞ。俺は以外の妻は待たぬといつも言っている」


 今の主君に仕える前からずっと連れ添っている愛妻・程徽テイキ。王飛は苦楽を共にした彼女を深く愛し、誰に何を言われようとも側妻を持つことはなかった。

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