第3話

「脳を破壊しないと止まらないのは心臓や呼吸の停止から数分間は脳が活動を続けることがあるからだろうか・・・」

そんなとこで生物の意地を見せないで頂きたいものだがな。

情報を整理したところで現状を打破するような収穫は無し、か。

深く息を吐いてノートを閉じる。

「肉体労働の時間、じゃな」



罠を解除し捕らえていた感染者を運び出し屋上へと向かう。

成人男性だったものを運ぶのはやはり骨が折れ、台車などを探そうか悩むも高低差があるのを考えると結局はこうして運ぶのが一番かもしれない。



「ふんっ、ふんぬっ!」



今だけでもよいから軽くならんか!

そんな魔法のような事を願いながら屋上の扉を足で開ける。

空は既にオレンジ色に染まっており、また成果が得られない一日を過ごしてしまったと落胆してしまう。

視線を空から下へ落とす。モールの外には数え切れない程の感染者。

しかし新たに侵入しようとするものはおらず、出入口はきちんと封鎖されているとみていいだろう。



何でも揃う、を売りにしてるこのショッピングモールは日本一の大きさを誇るらしく僕がバリケードを設置し安全を確保できた部分はごく一部でしかない。

にも関わらず出入口が封鎖されているのは僕以外の人間が建物内におり同じようにバリケードを設置しているから、と考えて良さそうだ。



既に中に居た感染者は粗方排除できたはず。生存者探しも兼ねてバリケードを拡張するのも視野に入れるべきかのう。



居住スペースとして使っているバックヤードには電気も水道も通っており、その他の電気の通っていないモール内は感染者の背後を取りやすいのもあってあえてそのままにしていたが安全が確保されたならば機械管理室なるものを見つけてよりよい生活を送りたいところ。



「よし。目標決定、じゃな!」



ガッツポーズを決め運んできた感染者を屋上から突き落とす。建物内に放置して万が一の事があればたまったもんじゃないからな。

べちゃり、と音を立てたそれに感染者共は飛びつく。

少女はそんな様子を腰をかがめて眺めていた。



やはり、と顎に手を当て考え込む。

動いている時は共食いはしないのに脳を破壊した途端食いつきはじめた。

わけのわからん奴らじゃ・・・。

ともあれこの情報が後に使える場面があるかもしれん。

感染者をおびき出したい時や動きを止めたい時などには持ってこいだろう。



「おっと、子供は暗くなる前に帰らねば」

こんな美少女、化け物とて放っておかんじゃろ。



興味を失った少女は鼻歌を口ずさみながら屋上を後にした。

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