ラヴェンナが舞踏会に足を運んだのは、社交界での立場を守るための義務感からだった。カリオスとアレックス伯爵がいることは予測していたが、同じ空間で二人がどう動くかまでは考えたくもなかった。

（せっかく穏やかな日常を取り戻しつつあったのに、どうしてこうも厄介な状況に追い込まれるのかしら……。）

華やかな舞踏会の会場で、ラヴェンナはできるだけ目立たぬよう振る舞っていた。しかし、彼女の存在感は否応なく注目を集め、二人の男性もまた彼女を見つけるのに時間はかからなかった。

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火種の再燃

「ラヴェンナ、久しぶりだね。」

そう声をかけたのはカリオスだった。彼の言葉に、ラヴェンナは内心ため息をつきながらも、冷静な笑みを浮かべて答えた。

「カリオス様、こんな場で再びお会いするとは思いませんでしたわ。」

その時、後ろからアレックス伯爵が現れた。彼の険しい表情は、カリオスを見つけた瞬間にさらに険しくなった。

「カリオス侯爵の次男殿、彼女の近くにいるべきではないのでは？」

カリオスは鼻で笑いながら振り返る。

「何を言っているんだ。僕はただ旧婚約者として彼女の様子を見守っているだけだ。」

「見守る？ それを迷惑行為と言うのだよ。このストーカーが！ 彼女がどんなに迷惑していると思っている！」

その言葉に会場中の視線が二人に集中した。カリオスの顔が赤くなり、彼は声を荒らげた。

「何だと？ 君こそ、彼女を所有物のように扱っているだけじゃないか！」

「私は彼女を尊重している。だが君は、自分の未練を押し付けているだけだ！」

二人の声が次第に大きくなり、周囲の貴族たちはざわめき始めた。

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ラヴェンナの怒り

二人の言い争いが止まらない中、ラヴェンナはついに堪忍袋の緒が切れた。彼女はドレスの裾を軽く持ち上げ、一歩前に出た。

「お二人とも、いい加減にしてくださいませ！」

その冷静ながらも強い声に、二人はハッとして口を閉ざした。会場は再び静まり返る。

「ここは社交界の場ですわ。私個人の事情で、これ以上無礼な振る舞いを見せるのはやめていただけますか？」

二人はラヴェンナの鋭い視線を受け、明らかに動揺している。しかし、カリオスはなおも言葉を続けようとした。

「でも、ラヴェンナ、僕は――」

「もう結構ですわ、カリオス様。」

ラヴェンナは冷たく言い放つと、再びアレックス伯爵に目を向けた。

「アレックス伯爵、あなたも私を尊重してくださるのであれば、この場でこれ以上の言い争いをしないでください。」

アレックスは一瞬言葉を失ったが、やがて深く頭を下げた。

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評価の低下

舞踏会の後、社交界では二人の争いが大きな話題となった。

「カリオス侯爵の次男、本当に情けないわね。」

「アレックス伯爵も残念だったわ。あれでは婚約者として信頼できない。」

二人の評判は一気に地に落ち、特にアレックス伯爵にとっては婚約話に大きな影響を与える結果となった。

翌日、アレックス伯爵からラヴェンナ宛に手紙が届いた。

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婚約話の取り下げ

手紙にはこう書かれていた。

> 「ラヴェンナ様、昨日の舞踏会での振る舞いにより、私があなたの信頼を損ねてしまったことを痛感しております。このような状況で婚約を進めることはあなたにとって不利益であると判断しました。」

ラヴェンナは手紙を読み終え、静かに目を閉じた。

（これで終わりですわね……。）

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自由への決意

ラヴェンナは窓辺に立ち、外の風景を眺めながら深く息をついた。これまでの騒動が終わりを迎えたことに安堵しつつも、次に進むべき道を考え始めていた。

「私はもう誰にも振り回されませんわ。これからは、自分自身で選んだ未来を歩んでいきます。」

彼女の瞳には新たな決意が宿っていた。

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