夏色メモリー

ガミ、ガミ男

第1話

嫌味なほどに暑かったあの夏は、遠い夢のように儚げで。 

水面に映るぼくらの姿も、小川のせせらぎとともに、溶けて消えていく。


シャッター通りの喫茶店で飲んだクリームソーダの味も、

町を一望する寂れた鳥居の下で聴こえた蝉の声も、

雲一つない青空を横断する飛行機雲を眺めていた風景も、


思い出すには朧気で、薄れていて。


ただ。


西日が差し込む階段の踊り場で、きみと涼風を浴びたあの夏の匂いだけは、



記憶の底に染みついていた。

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夏色メモリー ガミ、ガミ男 @gamigamio

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