第2話
「1707年 この年にはいわゆる異種族とされる人種の存在が文献に仄めかされている。このことから彼らの起源はこの年に関係しているのではと言われている。ここ、テストに出るから覚えておくように」
歴史は嫌いだ
過去のことを知ってもどうにもならない、何回やっても繰り返すどころかより悪化することだってあるのにそれを学ぶことに意味があるのだろうか。賢者は歴史から学ぶというけれど経験だって捨てたものではないしそっちの方がいいのではないか。どちらも振り返るのは過去ってことは変わらないけど。なんて物思いにふけていたところ
「おい芥子、話聞いてたか?板書してるのは空じゃなくて黒板だぞ」
「…聞いてました」
「じゃあ先生がなんの話してたかは言えるか?」
「えと、それは」
「すぐに答えられないなら聞いてないのと同じだ。しっかり聞け」
「はい…」
率直にいって、やってしまったと思った。考えが別の場所へ行ってしまうのは僕の悪い癖でよくしてしまうけど、担任の授業でやったのは最悪だ。ただでさえ先生には心配をかけているのにさらに不安にさせてしまう。くすくすと嘲笑ってくる幻聴さえ聞こえる。
ゴーン
どことなく間の抜けた、古ぼけた終業の鐘が鳴る。少し明るさが混じった赤に染まる新校舎、日はすでに傾きかけている。次第に夜に入りゆく空と違って教室は活気に満ちて、様々な姿形をした生徒はそれぞれ好き勝手に談笑に入り始めた。僕も一息ついて休みを入れる
「おつかれー芥子!あとさっきはドンマイ」
クラスメイトの鎌切が鎌のような器用に手を使って鞄に物を入れながら話しかけてくる
「いや、あれは俺が悪かった」
口角を上げる、不自然ではないだろうかと心配した
「そうか?まあでもあんま気にしてなさそうでよかったわ」
気のいい数少ない友人は万華鏡のような瞳を気楽な色で染めている。
「つか週末暇?遊びに行かねー?」
こうして今も、遊びに誘ってきてくれる。それでも
「ごめん、ちょっと週末は今忙しいんだ」
くだらない嘘をついた、きもちわるい
「マジ?しゃあないかー」
一瞬だけ残念といった表情になったがそれもすぐに終わり切り替えたようだった。ほっとする。きもちわるい
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいやいだいやだいやだいやだいやだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ
申し訳なさと不快感が落ち葉のように積もっていく。彼らに対する不当な違和感と猜疑心は消えない。
人の形をしているけれど、ヒトとは似ても似つかない、そんな彼らへの不快感。それらは自分自身を縛る地獄の鎖にも似ていた。
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