第0.5話 君を愛すまで
妹が死んだ。あの河川敷で自殺をした。まだ14歳だった。
僕は、妹がいない世界に意味を感じていなかった。でも、死ぬ勇気はなかった。
引きこもりがちになっていた僕は、母に言われ気分転換に街を歩いていた。
ふと気づいたら僕の足は公園へ向かっていた。キラキラと輝く太陽の下、ちらほらと子供たちが楽しく遊んでいるのが見える。僕は懐かしい気持ちに浸りながら、公園のベンチで妹との思い出に浸っていた。
1つ、また1つと妹の思い出を思い返していると、ふと隣に気配を感じた。隣を見ると女の子が座っていた。
「えっと⋯どうしたの??ベンチなら他にも空いているだろう??」
「うーん⋯お兄さん辛そうだったから。」
「⋯はは、心配はありがたいけど、僕の隣にいても何も楽しくないよ?ほら、他の子達と遊んできなよ。」
「お母さんが言ってたの。誰かが隣にいるだけで、安心した気持ちになれるんだ。
だから、お兄さんが落ち着くまで一緒に居てもいい??」
⋯この子と話しているうちに心地よい気持ちになっているのは確かだった。
「⋯うん、それで君がいいのなら。」
「うん!!ありがとうお兄さん。」
「とは言っても、ずっと座っているだけじゃつまらないだろう。なにかしたい事とかは無いのかい??」
「うーん⋯じゃあ私のお話でも聞いてくれる??面白いお話はできないかもだけど」
「⋯うん、いいよ」
それから彼女は色んなことを話してくれた。
ご飯を食べていたら鳩に盗まれたとか、兄が誕生日の時にプレゼントを渡したら泣いて喜んでくれたとか、
⋯兄が入院していることや、父親が鬱病になっていることも。
「⋯なんで、君はそんな辛い思いをしているのに、笑顔でいられるんだい??」
踏み込みすぎたと思いながら、聞いてしまった。
「うーん、あっそうだ!!」
そういいながら彼女はどこかに走っていった。
やっぱり深入りしすぎてしまったかな、と思いそろそろ家に帰ろうかなと考えていた頃、彼女が帰ってきた。
「お兄さん!!お待たせ!!これ、あげるね。一緒に食べよ!!」
そういい、彼女が手渡したのは、子供の頃よく食べていたアイスだった。
「お兄さんの質問の答えになるかは分からないけど、よくお父さんに言う言葉があるんだ。
『人生辛いことばかりじゃない。沢山のことに目を向ければ小さな幸せは転がってる』ってね。」
「⋯『小さな幸せ』か。」
「人は辛いことばかり考えすぎちゃうだけで、きっと幸せだと感じる時はいっぱいあるんだと思うんだ。」
「⋯そっか、考えすぎ⋯⋯ふふ、いい考えだね。」
「ほら、見てお兄さん!!アイス当たったよ!!これ、お兄さんにあげる。幸せのお裾分けってやつだよ。」
遠くから彼女を呼ぶ声がした。時計を見てみると随分と話し込んだみたいだ。
「今日はありがとう、お兄さん!」
「こちらこそ、ありがとう。ねぇ最後に聞いてもいい??君は、今幸せ?」
「私はね」
「また、会いたいな⋯『楓』」
そういう彼の手には2本の当たりの棒が握られていた。
『幸せになるために生きてるんだ!!』
夢見る天使 水素。 @sekainosuiso
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