夢見る天使

水素。

第1話 君と共に歩む希望の風

なんでこんなことになったんだろう…。なんで…。

暗い思考が頭をずっとめぐり続ける帰り道。

彼女は駅で電車を待っていた。

どうして…先生…。

今日、命の恩人である先生のお見舞いに行った帰りだった。

彼は刺されたのだ。彼女の目の前で。彼女を庇って刺された。

あの時、私が気づいていれば…

過去はどんなに後悔しても変わらない。そんなことはわかっているが思考は止まることを知らない。

そんな思考を止めたのは電車が来るアナウンスだった。

『まもなく列車が参ります。危ないですので黄色い線までお下がりください。』

…過ぎたことはどうしようもない。今は先生が目覚めることを願おう。

その時うっ…。と呻く声が聞こえた。

辺りを見渡すと近くで白く染まった長い髪を持った女の子がしゃがんでいた。

「…!!大丈夫ですか…!?」

心配して声をかけた彼女は次の瞬間、

体が宙に浮いていた。

「…え」

自分の意思とは関係なく体は線路内へ落ちていく。

最後に聞こえたのは冷たく刺さるような風の音と、『ごめんね。』という声だった。


「…あ、れ…。ここは…??」

目を覚ました彼女は見知らぬ場所で倒れていた。

「…遊園地…??」

気づけば彼女は、遊園地のような場所にいた。 彼女の記憶は混濁し、なぜここにいるのかもわからない。

「…私、なんでこんな所にいるんだろう。」

彼女が思い出せたのは「日暮 楓」という自分の名前、そして冷たく刺さるような風の音と『ごめんね。』という声だけだった。

「とりあえず、辺りを散策するしかないかな…。」

人は思った以上にいる。歩いていけば知っている人もいるかもしれない。そう思った楓は遊園地を散策することにした。

どこからか小さく泣く声が聞こえる。

散策を続けてた楓はあるひとつの遊具まで辿り着いた。

「…観覧車だ。」

観覧車だったらこの遊園地全体を見渡せるかもしれない。そう思い観覧車の列に並ぶことにした。

列に並んでいる最中に楓は思わぬ人を目にした。

「…先生…??」

楓は自分の過去についての記憶を無くしていた。でも、頭が、あれは先生だと訴えかける。

先生は、私の目の前で亡くなったはずじゃ…。

死んだはずの先生の姿を見つけ、楓は戸惑った。そうか、ここはあの世なんだ。

観覧車を降り、楓はふらふらと園内を歩き始めた。 ネオンが瞬き、遠くからはメリーゴーランドのオルガンがかすかに聞こえる。


その時──弱々しい泣き声が耳に届いた。 「……お母さん……どこにいるの……」


楓は足を止める。 しかし、彼女は今はそれどころじゃない。突然知らない世界に来て、ここが死後の世界だって分かり混乱しているからだ。

「…お母さん…。」

しかし、彼女には無視することなんて、出来なかった。

楓は自分の胸を押さえ、小さく息を吐いた。

「ねえ、君。こんなところで泣いてどうしたの??」

振り返った小さな男の子が、涙で濡れた目を見開いた。

「お姉さん…だれ…??」

「私は楓。君は? こんなところでどうしたの??」

楓はしゃがみ込み、少年の頬をそっと拭ってやる。

「ぼくは統咲っていうの。お母さんを探してたら…迷子になっちゃって…。」

「そっか。じゃあ一人じゃ危ないから、私と一緒にお母さんに会いに行こうか。」

楓は微笑み、そっと少年の小さな手を握った。


統咲と名乗った少年と共にこの世界を探索していると、とある場所にたどり着いた。

「…花畑??…遊園地にこんなところがあるんだ」

「わぁ〜!!すっごく綺麗だね!!」

一面に広がる紫色や桃色、赤色が混じった沢山の花が咲き乱れていた。

「ふふっ、綺麗だよね。」

「…っ!?」

「わぁ!?びっくりしたぁ!!」

急にかけられた声に驚きながら振り返ると、うさぎの耳をもつ黒い髪の少女がいた。

「驚かせちゃってごめんね。はじめまして、私はルーナっていうの。」

ルーナと名乗った少女は笑みを浮かべ手を差し伸べた。

その手を握り返し、楓も言葉を紡いだ。

「…はじめまして。私は楓。この子は統咲だよ。その、ルーナはどうしてここに居るの??」

少し考えた素振りを見せたが、彼女は言葉を発した。

「…私の世界では、崩壊…酷い災害が起こってて、ずっとお兄ちゃんが戦っていたの。お兄ちゃんと、一緒に戦いたくて頑張ってたんだけど…いつの間にかここに来ちゃった。楓ちゃん達は??どうしてここに来たの??」

「その、私たちは統咲くんのお母さんを見つけるためにこの世界を回ってるところだったんだ。」

その言葉を聞き、ルーナは優しい笑みを浮かべた。

「そっか、私もお兄ちゃん会うために頑張ってるんだ。君もきっと会えるよ。大切な人に。」


「このお花畑には駅があって、この世界を旅立つ人達が乗っていくの。そこからの景色はとっても綺麗なの。良ければ寄ってみてね。」

「ありがとう。またいつか行ってみるね。」


だんだん日も暮れ始め、世界が夕焼けに染まり始めた頃、楓たち2人は迷子になっていた。

「…ここ、何処だろう。」

途方に暮れていた頃に遠くから声をかけられた。

「おい、そこのお前ら、そこで何やってんだ。もうすぐ夜がくる。早く建物の中に避難しとけ。」

「あなたは…??それに夜??夜になにかあるんですか??」

声をかけた人は少し目を見開き、驚いたような顔をしたが、すぐに、諦めたような表情になった。

「…お前、新入りか??はぁ…また1人増えたのか…。俺は金見だ。いいかこの世界の夜は危険なんだ、それに加え雨が降ってきた時はもっと最悪だ。早く建物中に避難しろ。案内はしてやるよ。」

彼が言ったように、建物の中に入ったすぐに夜になった。

「今日はここまでかな。統咲くん、また明日お母さんを探しに行こう。だから今日はもう寝ようか…統咲くん??」

統咲は何処か遠くを見つめ、目を見開いていた。

「…お母さん…??楓さん!!お母さんが外にいる!!行かなきゃ!!」

そう叫び、統咲は勢いよく走り出した。

「えっ、ちょっと!!統咲くん!?外は危ないんだよ!?…あぁ!!もう!!」

楓は統咲を追いかけ、夜の街へ走り出した。


「はぁっ、統咲くん、どこ行ったの…!!」

あちこちを走り回りながら探し回りようやく統咲を見つけたが、統咲はちょうど何かに襲われているところだった。

「統咲くん!!こっちだよ!!」

何とか隠れてやり過ごしたが周りにはまだたくさんの化け物がさまよっていた。

今、統咲くんを守れるのは私しかいない…。

「…統咲くん、ひとりで建物の中まで帰れる??」

「帰れるけど、楓さんは??」

覚悟を決めた楓は優しく統咲に伝えた。

「私はあの化け物達を何とかするから、その間に走って逃げて。」

「でもっそれじゃあ…!!」

彼の心配の声も聞かず、楓は言った。

「私なら大丈夫だから、じゃあ行くよ。」

楓は拾った石を化け物へ投げ、建物とは反対方向へ走り出した。


走っているうちに雨が降り始め、足取りが重くなっていく中、必死に遠くへ、遠くへ走っていく。

足ももつれ始めてきた頃、逃げた先に大きな川が広がっていた。

「行き止まり…!?」

化け物はすぐそこまで迫っている。

「もう、行くしかない…!!」

彼女は恐怖と決意の中、川へ飛び込んだ。 どんどん身体が水の中へ沈んでいく。化け物達は去っていったようだ。

…もうここまでなのかなぁ

その瞬間、温かな手が川から楓を引き上げた。

「…で、かえで…!!」

だれ、だれがわたしの名前を呼んでるの??

…私は、この声を知っている気がする…。


「………。」

「あれ、こんな所でどうしたんだい??」

「…湖森先生。」

私はこの教師が苦手だった。若いくてかっこいいって生徒たちに人気で、彼の周りは笑顔で溢れてて…まるで笑えない私には居場所がないような…そんな雰囲気が苦手で、ずっと彼を避けてきた。

「先生には、関係ないことですから、ほっといてください。」

「そんな事言わないで、ほら、先生に話してみないかい。」

「…だから、先生には関係ありません。それに、この気持ちは先生には分かりませんから。」

「よいしょっと。」

静止の言葉も聞かずに隣に座った彼に、彼女は嫌悪感を抱きながら、言った。

「話聞いてました??ほっといてくださいって言ったでしょ。」

こんなに拒絶したのに、なんで隣に座ってくるんだこの人は…。

「無理に話さなくていいよ。でもね、隣に誰かいるだけで、安心するものなんだよ。」

「…。」

その言葉は、彼女の大切な言葉だ。なぜ、目の前の男がその言葉を知っているのか、

しかし、彼女の心は確実に軽くなっていた。

「…私、顔面神経麻痺って言って、顔の左半分が上手く動かないんです。食べ物も上手く食べれないし、飲み物を飲むのも一苦労で、笑うことすら出来ないんです。笑いたくても、半分の顔が動かないから、上手く笑えないから、みんなのこと不快にさせちゃうし、私だって笑いたいのに、泣きたいのに、」

彼は、全てを打ち明かしてくれた彼女を見つめた。

「…よく頑張ったね。大丈夫、君は強い子だよ。きっと治るから、また、笑える時が来るから、だから無理はしないでね。」

「…ありがとう…ございます…。」

気持ちを軽くしようと彼は、明るく話を変えた。

「さっ、もうすぐ下校時間だ。楓、また明日」

「はい…。あのずっと思ってたんですけど、」

「…??どうかしたのかい??」

「なんで私のこと呼び捨てなんですか。」

「えぇ…!?そこかい…!?」

――あぁ、そうだ、あの声は、


『こうやって会ったのは、2回目だね。楓。ほら、君の願いを聞かせてよ。』


『…私は、先生を助けたい。』


「絶対にこの子には手を出させない…!!」

何とか楓をこの洞窟内に避難させたのはいいものの、魔物に囲まれてしまった。

例え、ここで魂を連れて行かれてしまうとしても、楓だけは守るんだ。

そう誓った彼の横を鋭い風の音が通り過ぎ、突然、魔物が風穴を空け、倒れた。

彼は目を見開き驚いたが、同時に理解した。

「…目が、覚めたんだね。全く寝坊助さんだ。」

「…ちょっと寝過ぎちゃいました。おはようございます、湖森先生。」

彼女は白く染まった瞳孔を輝かせ、微笑みながら、手を差し出した。

「私は先生を助けるためにここまで来たんです。ね、先生。一緒に帰りましょう、先生はこんな所で死んでいい人じゃありませんから。」

彼は驚きと感動が入り混じった表情を浮かべた。

「ははっ…本当に、楓は変わらないね…。」


玄関の扉が開くと、統咲の顔がぱっと輝き、涙が溢れ出した。

「うわぁぁあん!!楓さん!!良かったよぉぉぉぉ!!」

彼は思わず楓に抱きつき、大声で泣きじゃくった。

それを見ていた金見は、険しい表情で楓に向き直る。

「お前なぁ、統咲を助けるためとはいえ、無理をしすぎだ。もっと周りを頼れ、馬鹿。」

その言葉は厳しいけれど、どこか心配と優しさがにじんでいた。

楓はそんな二人を見て、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


四人がテーブルを囲んだ。 空気は緊張と決意で満ちている。

「この世界から脱出する方法、何か手がかりはあるのか??」

「まだわからないけど、僕たちには時間がない。夜になると魔物が来る。」

ふと、うさぎの少女が言っていた言葉を思い出した。

『このお花畑には駅があって、この世界を旅立つ人達が乗っていくの。』

旅立つ…つまり、この場所から出る為の鍵になるはずだ。

「帰る場所…。そうだ、ルーナが言ってた駅…それに乗れば帰れるのかもしれない。」

「僕も、お母さんに会いたい。みんなでここから出よう。」

「私たちは、絶対に諦めない。先生も、統咲くんも、金見さんも…みんな一緒に。」


四人が歩いていくと、視界に広がるのは一面の花畑だった。

夜空の下、花々は淡く光を放ち、まるで地面に星が咲いているかのようだ。

「…やっぱり、ここ、綺麗…。」

楓が思わず声を漏らす。

統咲が花の中に立ち止まり、指をさした。

「あそこに、駅があるよ。」

その先に見えたのは、小さな木造のホーム。柱には「月ノ宮駅」と古びた字で書かれた看板が掛かっている。

無人駅のはずなのに、どこか人の気配を感じさせる、不思議な空気を纏っていた。

「ルーナが言ってた駅…きっとここから出られる。」

楓の言葉に皆が頷く。

だが、金見は静かに花畑を見渡しながら口を開いた。

「…この花は、送られた者の記憶だ。」

「記憶??」

楓が聞き返す。

「死んだ人が最後に見た景色や、大切に思ったもの。それが花になって、ここに咲くんだ。」

彼は白い花を一輪摘み取ろうとして、途中で手を止めた。

「摘んだら二度と返り咲かなくなる。だから俺は触れない。」

しんと静まり返る花畑。

統咲が小さな声でつぶやく。

「もしかしたら…この花の中に、お母さんの記憶もあるのかな。」

その言葉に楓は少年の手をぎゅっと握り返し、力強く言った。

「大丈夫。一緒に帰ろう。帰れば、必ず会えるから。」

4人は花畑を抜け、やがて小さな駅のホームへと辿り着いた。

暫くして、そこに停まったのは、黒い鉄の列車。静かに煙を吐きながら、彼らを待ち受けていた。


死神の元へ向かう列車の中でふと目にした新聞を手に取る。


「またしても天使狩りが発生」

7月●日午後1時頃

日暮家の長男が家で倒れている、次男を発見。警察に通報した。

被害者は警察官である日暮 蕾さん(20)

家の中は鍵もしまっていたこともあり、第一発見者である日暮 蒼真さん(24)を犯人として捜査を進めております。

また、電車の人身事故にあい意識不明の状態である日暮 楓さん(16)も何か関係があるのではないかと、捜査が進んでおります。


「…早く帰らなくちゃ。」

と彼女は呟いた。


目的地の駅に着いたあと、眠鬼の群れが押し寄せ、地面が黒い影で覆われていく。 楓たちは門の前で立ち尽くしていた。

「俺はまだ、戻れない。仲間を連れ戻すまでな。」

淡々とした声だが、その瞳は決意で揺らがない。

「……それでも、ここに残れば…」

「安心しろ。帰り方は覚えた。迎えがなくとも、帰ってみせるさ」

そう言って、背を向ける。

「金見さん…。」

彼は軽く片手を上げるだけで、それ以上は振り返らない。

「行け、お前らの死に場所はここじゃない。」

三人は門をくぐる。 閉ざされる瞬間、楓はその背中を見た。 真っ直ぐに、眠鬼の群れへと歩いていく背中を。

門が完全に閉じる音と同時に、彼の低い声が夜に響く。

「……行ったか。さて、お前ら――相手してやるよ。」

彼は、冷気を纏ったナイフを構え、夜に紛れた。


門を抜けると、白く霞がかった広間に出た。 そこには玉座らしき椅子と、その上に足を組んで座る人物――黒い布で 目を隠した、どこか気の抜けた表情をしている青年がいた。

「……あー、来た来た。迷子にならなくてよかったね。」

ふわっと笑みを浮かべる。

「……あなたが、この世界を管理している死神…??」

「そうだよ。僕はセケル。まー、元はただの人間だったんだけどね」

彼は椅子に座り直し、肘をつく。

「……貴方たちがここに来たのは、バグみたいなものだよ。本来ならとっくにあっちに行ってた筈だから。」

「…じゃあ、どうすれば現世に戻れるんですか」

「んー…。」

死神はしばらく顎に手を当てて考えたあと、にやりと笑った。

「簡単に言うと、“まだ生きる理由”を証明すること。ここは死の世界だからさ、その理由が弱いと…あっという間に闇に呑まれちゃう」

「証明…??」

「うん。それぞれの心の奥にある影を乗り越えてごらん。そうすれば、生きる道が見えるかもね」

次の瞬間、床に映った三人の影がぐにゃりと歪み、足元から吸い込まれていく。 それぞれが、自分だけの試練へと引きずり込まれていった――。


彼は、広大な闇の中でゆっくりと目を覚ました。 無数の星々が遠く煌めき、彼を取り囲んでいる。 しかし、その空間はただの宇宙ではなかった。

頭上から、静かに降り注ぐのは水滴ではなく、ひとつひとつが輝く「言葉」の雨だった。

「…ここは…??」

彼は宙に手をかざす。 雨粒のように降る文字が、彼の指先に触れては消えていく。

「…冷たくはない、でも、どこか痛いな。」

歩を進めると、遠くに懐かしい少女の姿が見えた。

「…!!ねぇ、そこの…」

手を伸ばした瞬間、少女は光とともに消え、代わりに淡い緑色に輝く傘が宙に浮かんだ。

「…ありがとう。大切に使うよ。」

彼は傘を手に取り、微かに微笑んだ。

宇宙のような無限の闇の中、目の前の神は静かに言葉を紡いだ。

「考えが、変わったのか??」

神の声は優しく、しかし確かな重みを帯びて響く。

「……。」

彼は一瞬、沈黙した。 そして続けた。

「楓を庇ってここに来た時は、本当に死んでもいいと思っていたんだ。 大事な人を守って死ねるなら、僕の人生に悔いは無いって。」

「でも、でもさ…」

彼はは言葉を詰まらせ、視線を伏せた。

「そんな僕を追いかけて、 一緒に帰ろうって、 『先生はこんな所で死んでいい人じゃない』って、 真っ直ぐに言ってくるものだから…」

彼の声は震えた。

「まだ、生きたいって、思っちゃったんだ。」

神は微笑みながら頷いた。

「考えが変わったなら、それでいい。 お前は1番気に入っている人間だからな。 さあ、お前の願いを言え。」

彼はゆっくりと胸を張った。

「僕は、楓を助けるために、楓と一緒に帰るために、楓に恩を返すために――」

一呼吸置いて、強く言い切った。


白い花が咲き誇る花畑の中で、楓は小さく息をついた。 そして、力強く言い放つ。

「私は、私の力を必要としてくれる人がいる限り――」

少しだけ、目に光が宿る。


統咲は小さな拳を握りしめ、揺るぎない決意を語る。

「僕はお母さんに会って、 お母さんのことを笑顔にするまで――」

その声は震えながらも、真っ直ぐだった。


『まだ、死にたくない。』


「ちゃんと、生きる理由を証明できたみたいだね。良かった良かった。」

3人を見つめる死神は優しく呟いた。

「自分の命は大事にするんだよ。もし、本当に死にたいって思った時は、僕が連れて行っちゃうからね??」

3人は光に包まれた。自分の身体が消えていく中、最後に彼女が言葉を発した。


「先生、またね。」


カーテンの隙間から光が差し込む病院の寝床で、彼は重い瞼をあげた。

「ははっ…また、たすけられちゃったなぁ…。」

と小さく呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る