夢の中へ

@chimovtuber

幕間

ここは、失われた世界の残響。


記憶を映す水面は、割れて乾き、

誰かの夢を支えていた柱は、倒れて苔むしている。

けれどそれでも、旅は続いていた。


顔に花を咲かせた少女と、

青い目の少年がいた。


あの夜、水族館で出会ったふたりは、

同じ夢を見ていたのかもしれない。


でもそれが“仮想現実”の中だったのか、

それともどこか別の、誰かの心の内だったのか、

彼らはもう、確かめるすべを持たない。


ただ、今を歩いている。


少女は踊るために咲いた花を持ち、

少年は忘れたはずの涙の熱を胸にしまって、

夢の外の、壊れかけた現実の中を、歩いている。


それは旅だった。

誰かの記憶の残骸を拾う旅。

そして、もう誰もいない世界で、

「ここに私はいたよ」と伝えるための旅だった。

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