自己の一致は他者と同じ

@iimao

第1話

誰かにゆらがされ、

誰かのために生きて、

誰かを忘れて

誰かのために生きて

誰かが消えて、

私が消える。


運命とは正にそれ。


私が消えて、あなたが消えて、

消えてしまえば私もあなた。


私もあなたで、

あなたも誰でもないし、

誰かでもある。


ならば、混ざりあった私ならば、

この世の全ての幸福は、

私にとっての幸福でもある。


しかし、それは私の幸福だ。

私のものだ。


混ざりあった私たちは、

私によって私となる。


縋って生きて、

切り捨て死んで、

道をみたり踏み外したり、

人生における全ての喜怒哀楽が全て、

私という肉体によって形作られて、

それが私に与えられた人間性となった。


私は私。

あなたは私ではない。


しかし、

私も消えて、あなたも消えたなら、

そして、あなたの幸福が私と混ざったら、

私はあなたにもなるし、

あなたは私のものとなる。


私もあなたに混ざるし、

そしたらあなたも私になるかもしれない。


しかし、

ここにいる私は私だけだ。




――

蛇足


死が根源的恐怖なら、根源こそが死であり生であり未知であり既知でもあると思った。なら、それは根源という名の多面体であり、輪廻の輪という形である、ただの忘却の歴史かもしれない。そこには何もないかもしれない。

しかし、私は私の中で相反する幸福を感じられる。人を助けること、人に助けられること、人を愛すること、人に愛されること、人を害すること、人に害されること、正しい道を歩むこと、あえてそこから踏み外すこと、人に殴られ人を殴り、人に殺され恐怖は既知となる。根源は既知となり、同時に多面体故に未知が現れる。

未知は恐怖だ。

未知は恐怖だが、恐怖は既知である。私の幸福は既知である。未知である。

恐ろしくも尊い、しかし多面体的に負の側面を持つ。

既知は未知を産み、私は未知となりて既知を得た。

複数の相反する幸福は、これによって得られたのだ。

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