素晴らしかったです。軽妙で流れるような文章、道理も無くネクタイを締めた「僕」の不定形な散歩の中ですれ違う幾多もの人間達。誰もが何かしらその場所に至った背景があって、お互いがそれを知りようもない。だからこそ皆うっすらと孤独だが、それは必ずしも不幸ではない。読み終わった後、少し心が軽くなるような印象がありました。作中で「できるだけ、ドラマみたいなものがない小説を」とありましたが、その起伏の無さを補っても尚有り余る一介の人間達の描写力に強い魅力を覚えました。おすすめです。
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