第一章 緋鴉館へようこそ

 灰色の雲が山道を覆い、遠くでは雷がなっていた。

 僕は友人の蘭丸は、招待状を手に持ち、館へ向かった。

 招待状2枚と一緒に入っていた、手紙にはこう書かれていた。

「黒田朔之介様を緋鴉館にご招待させていただきます。もう一つの招待状はお友達にあげてください。」

 差出人は何処にも書いてなかった。

「本当に行くのか?めっちゃ怪しいじゃん」

「呼ばれたからには行くしかないだろ、調べたけど良くない噂があるだけで」

「それだよ!」

 蘭丸の顔は引き攣っていた。


 森の奥に立つ館は、想像以上に古びていた。

 赤黒く変色した外壁、軋む門。

 まるで誰かが僕達を待っているような気配があった。

 玄関を叩くと、オールバックの男が出てきにこやかに笑い明るい声で言った。

「紅影館へようこそ!私は元宮勝也です。荷物は運んどきますね。」

 勝也は荷物を大きな荷物を一回で持ち運んで行った、僕たちがどうすればいいか分からず玄関で待っていると「こちらへ」と案内をされた。

「私はこの館の主人、元宮英雄です」

 白髪混じりの髪で疲れ切ってる様子だった。


 薄暗い食堂に着くと男性一人、女性一人がいた。

 男性は机に伏せていて寝ているようだ。

 女性は本を読んでいて僕たちには気づいていない様子だった。

 僕たちはとりあえず席に着き他の人を待っていた。

「いっせーので1!よしあがり!」

「クソ野郎め!」

 そんな事をしていると背中を叩かれた。

 叩いたのはさっきまで寝ていた男性だった。

「こんにちは、いつ来たの気づかなかったよ、俺の名前は長船海介!よろしく」

 僕たちの手を握り上下に大きく振った。

「さっきから本を読んでる人の名前は四季碧華さんだ」

 何故かまた僕たちの手を握り上下に大きく振った。

 怯えている蘭丸を見てニヤリと笑い海介は下から顔にライトを当てながら喋り始めた。

「ここの噂知ってる?紅影の噂なんだけど、この館は昔、火事で何人も死んだ。

 それ以来、夜になると窓に赤い影が映るようになったんだ。見た者は、何かを失う。──命か、心か……」

 海介は、喋り終わると大きく笑い元々いた席に戻った。

 蘭丸は口を開けて固まっている。

 僕は「本当に出るかもね」と怯える蘭丸の耳元に言ったらみぞおちにパンチを食らった。

 僕が苦しんでうずくまっていると、玄関のほうから喋り声が聞こえてきた。

 その声は人達は食堂のドアを開けた。

「どうも、私達はミステリーサークルの者です。私の名前は城ヶ崎航です。」

 背が高く眼鏡をした男性が言った。

 ミステリーサークルの人達は次々自己紹介をし席に座った。

 ミステリーサークルの一人綺麗なロングが特徴の水鳥川美希が喋った。

「みんなで探検しない?」

 その場にいる蘭丸以外の人が賛成し緋鴉館を探検することになった。

 皆は楽しそうに探索しているが蘭丸は僕の後ろに隠れていた、僕は自由に動きたかったので蘭丸に

「一番後ろが一番危ないよ紅影に襲われちゃうぞ」

 と言った。その瞬間僕の前に行き海介の後ろにべったりついていた。

 その様子を笑っていると後ろから、カシャっと音がした。

「あの子友達?ビビりだね」

 いつも首に掛けてるカメラが特徴の花形紬が笑いながら、怯えてる蘭丸の後ろ姿を撮っている。

 すると柚は頭をポンと叩かれた。

 後ろには丸メガネが特徴の皐月美桜が立っていて言った。

「馬鹿じゃないの、てか馬鹿じゃないの」

「二回も言わなくたって」

「わっ!!」

 二人の会話に割り込んだのは、茶色マッシュの二色蓮だった。

 二人を驚かそうとしたのだろうが二人は真顔で蓮を見つめていた、その空気に耐えれなくなったからか、僕に助けを求める目をしてきた、僕もその空気が嫌だったので、三人にお辞儀をし、その場を離れた。

 

 ボロボロの館を良く見ながら歩いていると人にぶつかってしまった。

 それはボサボサな髪が特徴の匠瑛士だった。

「すみません、前見てませんでした。」

 瑛士は謝罪を無視して歩いていった。

 冷たい人だなと思っていると前から蘭丸が突撃してきた。

「なんだよ!」

「あの人悪魔だよ悪魔!」

 蘭丸は震える手でゲラゲラ笑っている海介を指した。

 僕は蘭丸を置いて先に向かった。


 海介と蘭丸と廊下を歩いていると、突き当たりの窓がかすかに赤く染まっているのが見えた。

 風のせいかと思ったが、次の瞬間、影がふっと揺れた。

「おいおいなんだよ!」

 海介は笑っていたが蘭丸は僕の後ろで怯えていた。

「気のせいだろ」

 蘭丸を落ち着かせていると、館の電気が消えた。

「うぁあああああ!!」

 闇の中、廊下の奥で再び赤い光が瞬いた。

 足音のようなものが近づいてくる。

 息を止めて立ち尽くすと、窓に赤い影がゆらりと揺れた。

 誰もいないはずの廊下で、確かに“何か”が歩いていた。

「うぁああやだやだもう帰る!!」

 蘭丸は恐怖で取り乱している、蘭丸を落ち着かせていると「大丈夫ですか?!」と言いながら勝也がやってきた。

「何があったんですか!!」

「出たんだよ!紅影が!」

 海介の喜んだ声に皆が集まってきた。

 その言葉にその場はお祭り騒ぎだった

 そんな状況を終わらせたのは英雄の大声だった。

「いるわけ無いだろ!ふざけるな!」

 皆は静かになった。

 英雄は急に大声を出したせいかゲホゲホと咳をしている。

「紅影の噂が嫌いなんです。今日はもう寝たらどうですか」

 勝也は英雄の背中を擦りながら去って行った。

「そうだなもう寝よう。」

 航が言った言葉に頷き皆は部屋に戻って行った。


「早く戻れよ!」

「嫌だ!一緒に寝ようよ」

 僕は部屋の前で蘭丸と戦っていた、蘭丸さっきの出来事にビビり一人では眠れないようだった。

 だがそんな蘭丸を押し出し、一人でゆっくり寝ることができた。

 (紅影……いるわけないよな)

 僕は目を閉じた。

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