プロローグ
この館には、昔から奇妙な噂が絶えない。
大火災が起きた夜、多くの命が消え去ったあの惨事の後、館には「紅影(こうえい)」と呼ばれる怪人が現れるという。
噂によると紅影は夜になると館を歩く、赤い光を伴って、見つめる
その姿を誰も正確に見た者はいない。ただ、赤い炎のように揺れる影が、壁や廊下を滑るのを見た者はいると言われている。
見た者は皆、必ず不幸が訪れると言う。
誰もいない部屋から赤い光が漏れることがある、それを見てしまうと、次の日何かを失ったり、二度と今までの生活が送れなくなってしまう
何も見えなくとも、館に一歩足を踏み入れた時点で、すでに紅影はその影で存在を知らせているのだ。
館の壁には、かつての火災で焼け残った赤い痕が点在している。
まるで壁や床に血で描かれた人影のように、そこに存在を刻む。
その痕と赤い影の噂が結びつき、館はいつしか「紅影館」とも呼ばれるようになった。
肝試しに訪れた若者たちは皆、赤い影が自分の背後を滑るのを感じ、息を呑む。
そして誰も口にしないが、館を後にするときには心の奥に、あの夜の紅影の視線がまだ残っていることを感じるのだ――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます