第10話 現実は甘くない

家族最初の晩餐が終わり、俺は食器を持ちキッチンに向かった。

 

 流し場には、一組の食器とスプーンが水に漬けられていた。あのギャルのだ。そういえば、いつの間にか席を立って、リビングから消えていったな。


 あのギャルは風呂も早かったが、飯を食うのも早いらしい。気づけばいなかった。

 男性は女性よりも食事時間が短い傾向にあり、これは食生活習慣や生化学的が起因してるらしい。風呂も髪の長さなどを鑑みると、男の方が早いだろう。


 あいつと付き合ってた時、会話の内容や食べるペースを考えたりしてたっけなぁ~。もう起こりようない事象に傷心する。



 食器を片付けようとしたが、裕也さんに止められてしまった。ご飯を作ってくれたのだから、食器洗いぐらいはやらしてくれと。

 

 流石にその親に言えないし、誰とは言わないが、あの陽キャにも言っといてくれ。


 ご厚意に甘え、二人に任せ、リビングを出る。

 リビングを去る間際、二人は仲睦まじく、食器を洗っていた。あの甘々な光景を見てると、こっちまで綻びそうになる。俺は自室に向かった。


 ◇

 

 二階に上がってすぐの物置部屋が半開きの状態で、中から光が洩れている。少し中の様子を覗いてみると、ギャルが荷解きをしていた。

 

 え?いつの間に業者来たん?どうやら俺の隣の部屋らしい。


 今日から轍家兼椿家は4人家族。部屋割りは、階段あがって左奥の角部屋が俺で、階段あがって正面すぐの部屋が葦里香、そして右手前の部屋が、書斎兼ベランダ。んで右奥角部屋が母さんもとい、夫婦の寝室になるだろう。トイレは1、2階完備、二階のは俺の部屋の正面にある。


 一瞬、荷解きを手伝おうかと思ったが、女の子だし色々触れてほしくないものをあるだろう。何も言わずに自室に入った。

 

 今日出されてた宿題、まぁ寝てたから乱雑に机に突っ込まれてたのだが、一先ず宿題をやり、この前買った問題集をやり、来月末にあるだろう中間考査の予習をした。

 

 俺にとって勉強はマストだ。

 

 10分ほど筋トレし、風呂に入った。念のため、風呂を入れなおそうと思ったのだが、風呂の栓は先に抜かれていた。シャワーオンリー派か、のを気にするタイプか、まぁ今後、気を付けるとしよう。

 

 風呂から上がり、髪を乾かし、またかち合うことを考慮して先に歯磨きをした。


 自室に戻った俺はベットにダイブ、布団に潜った。


 最近日課になりつつある作品探索を始めるためにスマホを開いた。

 今日はどれにしよう…。適当に探そうとするのだが、どうしても浮気、不倫モノに目がいってしまう。

 

 人気順ではなく新着順でソードし、スマホをスワイプする、すると、とあるワードの作品に目が留まった。幼馴染モノだ。


 話はこう。

 主人公の誕生日に、幼馴染の彼女が別の男とホテルに入っていくとこを目撃する。

 その光景に主人公は心神喪失。喪失感から狼狽え、何度も嘔吐してしまう。

 振られた主人公を救うべく、突然転校してきた美女と昔から好意を寄せられてた義妹に言い寄られる。

 立ち上がった主人公は身なりや生活態度を改める。

 その頃、幼馴染が遊びだったとして間男に捨てられる。

 逆に主人公は慰められ、立ち直り、復縁を迫ってきた幼馴染を断ち切り、ざまぁ、ハーレムエンドと。


 ?????????????????????????????????????

 

 いや、そうはならんやろ。

 

 確かに浮気された時の喪失感はヤバい。心臓がキュッと締まるし、脂汗もえぐい。気分もなんだか、胸から頭にかけて熱?蒸気?が頭の先からフワッと逃げていく感じがする。でも、別に吐きはしなかったな。 


 実際はメンタルの強さ的な部分やその人が生まれ育った環境が左右されることもあるのだろう。


 で、だ、なんで幼馴染は可愛く努力を重ねるのに、お前はゲームとかにうつつを抜かすの?彼女に構ってやれよ!好きなんだろ?

 

 ほんで、別れてからイメチェンすな!!! 我々は、共にサレ男という等級に分類されるらしい。【彼女のために自分磨きを怠らず、金も時間も使ってきたやつ】と【彼氏、または幼馴染の立場に胡坐をかいて、趣味に労力や時間を使ってきたやつら】お前らがだぞ?マジで納得いかねー!


 フィクションと現実が分からない男がいた。いや、それは俺だった。


 最近あった出来事で自分に置き換えて考えてみようと思う。


 今日一日で俺にもことがあった。転校生と義妹に出会った。ことなだけで似ても似つかなかった。

 転校生は1日寝てた俺に哀れみはすれど、好かれはしなかった。ファーストコンタクトの印象は最悪だろう。義妹は論外。彼氏がいるらしい。


 最後にハーレムエンド。いい感じに終わってるけど、それやってること二股な?

 

 現実はこんなにもうまくいかない。俺らは情けないのかもしれない。それでも情けないと思われてる俺らは、俺ら自身を嫌いなどなれなかった。


 でもフィクションにあーだこうだ言いてるのはダセェかも。


 もうすぐ朝がやって来る。カーテンの隙間から外を見ると曇っていた、まるで俺の心模様みたいだ。

 

 登校時間まで少しある、アラームをかけて、少し眠り、今日も学校に向かおう。

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