第3話
大学の帰り道。
夕暮れの中、ミチルは、郊外の住宅街を歩いていた。
少々偏屈だが、物知りで頼もしい先輩の研究に付き合っていた為に、帰宅の時間が遅くなってしまった。
太陽が西の彼方の山に沈む寸前。
夕焼けの中、ふと鳥の鳴き声に反応し、ミチルは空を見上げる。
ミチルの視線の先で、カラスの群れが空を飛んでいた。
赤く染まる空を覆うかのように飛ぶ黒い鳥の群れは悠然としており、ミチルは足を止め、その光景を見つめていた。
その直後、
「きゃーーーー!」
声が住宅街に響く。
その声で、ミチルはカラスの群れから眼を離す。
…今のは、叫び声だった。
その声は、近くの公園から聞こえてきたようだ。
…なんだろう?
ミチルは、叫び声がしたと思われる公園に向かった。
公園に着くと、人集りが目に入る。
…何かあったのだろうか?
女性は、近くにいた中年の男性に、聞いてみた。
男性によると、この公園で、血だらけの死体が見つかったとの事だった。
しかも、事故ではないらしい。
何か事件だろうか?
人集りの隙間から、血溜まりに横たわる死体の姿が目に入った。
ミチルは、息を飲む。
他人の死体を、しかも無残な姿の死体を見るのは、初めてだ。
ミチルは、死体には申し訳ないが、不快感を覚え、公園を後にする。
その時、ミチルは、自分の足元に何か黒いモノが落ちているのに気がついた。
…なんだろう?
ミチルは、それを拾い上げる。
それは、長さ10cm幅2cm程の、黒いナイフのようなものだった。
左右の刃があるタイプの、小さい刃物だ。
だが奇妙な事に柄の部分が非常に細い。
柄の直径は3ミリにも満たない。
しかし刃の部分は細く鋭利であり、油断すれば触れただけで手を傷付けかねない程だ。
少なくとも、切ったり突いたりするような用途では使えない。
当然、殺傷力も、無い。
「なんだろう。これ。」
その珍しさに惹かれ、ミチルはその刃物をハンカチで包み、鞄に入れた。
「今度、先輩に見せてみよっと。」
そう呟いて、ミチルは帰路についた。
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