第20話 入部特典で彼女ができます

「失礼します」


 俺に突っ掛かってきた不良三人を【神の見えざる手インビジビルアームズ】で拘束し、部室へと入るとハムスターみたいな小動物を思わせるかわいらしい眼鏡を掛けた美少女がか細い声を上げていた。


「よ、ようこそ、迷宮部へ……私は部長の森野シノブです」


 部室の中は不良たちの溜まり場になっており、雀卓がドンと真ん中に鎮座している。おまけにビールの空き缶が散乱し、煙草の吸い殻が灰皿に溜まっていた。


「日向哪吒って言います。あの……ここってホントに迷宮部ですよね?」

「は、はい……」


 どう見ても不良の溜まり場だ。


 見た目で判断するのは良くないが、彼女のようなかわいらしい女の子が不良たちの巣窟にいれば間違いが起こってもおかしくない。なのに彼女は平然とまではいかないがこの場所に馴染んでいる……。


「気になりますよね、私みたいな冴えない子が彼らと一緒にいることが……」

「ああ、そうだな」 

「実は彼らに私は見えていません」

「えっ?」


 俺の目の前にはセーラー服の黒髪おかっぱの小柄の美少女がいる。


「もしかして、潜伏スキル持ち?」

「はい、ご明察です」


 シノブは頬を緩め、よろこんでいるようだった。 だが、彼女はおもむろに椅子から立ち上がるとセーラー服のファスナーを下ろしてしまう。


 ストンと俺の眼下にスカートが落ちた。


 見てはいけないと思いつつも、俺の目はシノブの下半身へフォーカスされてしまう。だがその先は俺の予想だにしない光景が広がっていた。


 胸元とお腹が網タイツっぽい鎖帷子になったボディスーツを着用している。とても彼女の身体にフィットしており、セーラー服を着ていたときとまったく異なった雰囲気を醸し出している。


 何と表現すればいいんだろう?


 私、脱いだら凄いんです! と言わんばかりのたわわが呼吸する度に揺れているような気がしてならない。とにかく魔物に対抗するための破廉恥な忍者の恰好をしている。


「実は私、忍者の末裔でして隠れるのは得意なんです!」


 うら若き乙女の柔肌を年頃の男の子のまえでそんなことを言うのだから、堪ったもんじゃない。


 だって、今は隠すどころか、俺に晒してもんだから。


「もしかして、入部希望でしょうか?」


 目をキラキラと輝かせながら、上目遣いで俺に訊ねてくる。


 別に入部を渋っていた訳じゃないが、あまりにも純真な彼女の気持ちに気圧されていると……。


「もし今なら入部特典で私が彼女として付いてくるキャンペーンを実施中です! 是非この機会をお見逃しなく……」


 お互いに目が合うと、シノブは顔を赤く染めて俺から目を反らした。


 きっとウェルカムジョークのつもりだろうけど、えっちな恰好で恥じらう彼女がかわいくて返答に窮していると、彼女の顔が曇る。


「ああっ! やっぱり私みたいに冴えない子なんて嫌ですよね……。じゃあ、恥ずかしいけど脱いだら入ってくれますよね?」


 そう言って、ボディスーツの胸元の部分を引っ張りはみ出した横乳を広げてくる。


「ま、待って! そんなことしなくても俺は入るつもりだったから」

「ホントですかっ! ありがとうございます」


 シノブは俺の手を握り、うれし涙を流していた。


「えっ!?」


 義手にグローブを嵌めていたが感触までは隠せるものじゃない。俺の手を握ったシノブは目を丸くして驚いた表情になったそのときだった。


「くそったれ、何だった……」

「何止まってんだ、早く入れよ、って!?」

「何だ? おまえいつの間に女連れ込んだ?」


 不良たちが部室の中へ入ってきたのだ。さっきシノブのサービス過剰に驚いた拍子に【神の見えざる手】の拘束が緩んでしまったのかもしれない。


「女なエロいコスプレさせて、パコんのか?」

「んな男より、オレとやろうぜ」

「馬鹿言ってんじゃねえよ、こういうのはシェアしねえとな!」


 シノブは怖かったのか、俺の後ろに隠れる。


「日向さん……私、怖いです……」


 今から隠蔽スキルを使っても見つかった以上、無駄だろう。


 今更無関係ですって言っても不良たちなは通じなさそう。そんなことよりシノブは誰にでも素肌を晒したり、気を許したりするような子ではないらしい。


「じゃあ、そこの邪魔な男を押さえつけて、目の前でその女を犯してやりゃ面白くなるんじゃね?」

「ははは! ちげえねえな!」

「じゃあ、その男をぶっ飛ばして、コスプレ女を回してやろうぜ」


 ああ、ホントありがたい。


 不良たちが真正のクズで良かったよ。


 もう一度【神の見えざる手】で拘束してもいいが……いいことを思いついた。


 リハビリとして不良たちに相手してもらえば一石二鳥。


「済まないが俺の彼女なんで手を出さないでくれ」

「馬鹿か! 男の目の前で女を犯して、絶対させてやんのが一番楽しいんだろうがよぉ!」


 金髪をヘアワックスで固めた男がいきなり殴り掛かってきたが、ダンジョンで人外と格闘してきた俺に取ってはスローモーションにしか見えない。


「止めてくれないか」


 俺の顔面に飛んでくる不良の拳を掴むと思いきり、握ることにした。


「あぎゃぁぁぁぁーーーーーっ!!!」


 部室に不良(金髪)の悲鳴が響いた。

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