第2話
真っ赤な夕陽がリンの瞳に映る。リンの赤い瞳の中の僕はなかなかの男前だ。黒髪の似合う筋肉質的な青少年がクールを装っている。
リンの胸元ばかり意識がいく。ポルノは崩壊の道を辿っていた。
長閑のどかな河原を阿呆鳥が変な声を挙げて飛んで行った。小さな子供が数人、水切りしている。
「リン、お前は進路どうするんだよ」
僕達は羽宮同士で話していた。夫婦の関係である僕達にはお互いどこか冷めた部分があった。
「リキはどうせ、冒険家でしょ。バカみたい」
僕は微笑んだ。この血みどろの平和が好きだった。
「〝ペア〟ってどう思う」
リンは僕の口角を軽く抓った。微かな痛みに僕は大袈裟に呻いてみせた。
リンが怒った調子で言う。
「ちゃんと、答え聞いてから質問してよ。質問に質問で返す人級にヤバいよ、それ」
僕は身長を利用して、リンの黒い髪の毛をボサボサにしてやった。
「そんな適当な自論知ったことか。で、進路と〝ペア〟についてお聞かせ願おう」
「もうリキったら」
リンは僕の名を呼んで、羽宮リキにはにかんで見せた。
僕達の学校では〝ペア〟制度のことを『〝ペア〟ガチャ』と呼ぶ習わしがある。『〝ペア〟ガチャ』に成功した男女は幸せに、『〝ペア〟ガチャ』に失敗した男女は不幸になると散々、喚かれていた。
羽宮夫婦は16歳にして比較的円満な方だった。お互いの容姿や性格に全くという訳ではないが不満は無かった。リンより良い女を探すのは逆に難しいだろう。
僕も僕で良い男の自覚があった。リンに相応しい男になろうと努力していた。
可愛い妻が隣で笑っている。その日常が崩れる心配など微塵も感じていなかった。
僕は自分に自惚れていたのだ。
リンが繋いだ手に力を込めた。
「私、海外に行って他の世界を見たい」
僕は唖然とした。それはナチスのドイツの異端行為と似た発言だった。テロリスト宣言のようなものである。
「殺されるぞ」
リンは僕同様相手の言葉を無視した。
「この国はダメ。いつか終わりが来る」
「だから、『〝ペア〟制度』があるんじゃないか」
「不幸な『〝ペア〟ガチャ』って何であるか知ってる?」
リンの淡々とした発言に僕は意表を突かれた想いをした。薄々勘づいていたのだ。
「互いに殺し合わせるためよ」
「お前がいなくなったら、俺まで死ぬ」
リンがポツリと言った。
「分かってたけど、リキって自分本位ね」
水切りの音はもう聞こえない。阿呆鳥も静寂の邪魔をしない。ここにいるのはリンと僕だけだ。
「俺は死にたくない」
リンは僕をキッと睨み付けた。
「協力が必要なの」
美しい目鼻顔立ちからは冷たささえ、汲み取れた。
「リキ、一緒にこの国から逃げましょう」
僕は周囲を見渡した。
誰もいない。
1人もいない。
生き物の姿1つ見当たらない。
変だ。
僕はリンの手を振り解いて走り出した。
背後に銃撃の音が聴こえ、微かな悲鳴が耳を突き刺した。
これは君と僕の戦争 @sameravary
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