第9話 面白くなってきたね

真澄空一(以降、特に断りがない限りは空一視点)


今日もつまらない一日になるかと思っていた。


「聞いた?早奈って子、実はかなり遊んでるらしいよ」

「うそ?宮島と付き合ってるんじゃないの」

「本当本当、宮島本人から流れてきた話だよ、間違いない」

「マジで?それって浮気じゃん」

「それだけじゃないよ、聞くところによると…」


今日のクラスもいつも通り、どこからともなく流れてきた噂話に花を咲かせ、面白おかしく語り合っている。根も葉もない話に、ここまで盛り上がれるものかと、私から見れば実に退屈だ。だが、今日は少し違う。


(どう考えても、できすぎている)


そう、どう考えても、この出来事は私にとって偶然すぎた。


……


「何度言わせるの?あなたのこと知らないし、付き合う気もない。だからちょっと私から離れてくれませんか」

「本当に悲しいな、明明我們是最般配的なのに、あなたはそんなに冷たい。これじゃ僕も諦めるしかないですね」

「それはどうもありがとう」


昨日、この学校の生活に飽き、目的もなくぶらぶらと歩いていた時に、たまたまこの光景を目にした。


もちろん、私でも早奈と宮島が付き合っているという噂は聞いていたが、あまり気に留めていなかった。一つには、学校の噂の信憑性はまちまちで、それらを信じるより自分で確かめた方がいいから。もう一つは、仮に二人が付き合っていたとしても、私には大した関係がなく、日常の出来事の一つに過ぎないからだ。


だから、特に驚きはしなかった。早奈と宮島は付き合っていない。噂はやはり当てにならない。


……


早奈千秋が複数の男性とラブホテルに出入りしている。今回はクラスに強い悪意を含んだ噂が流れている。


一般的に、クラスでこれほど強い悪意を持った噂が突然広まることはない。たとえそんな噂が流れたとしても、証拠がなければすぐに消えるものだ。だが今回は、少し様子が違う。


"噂の出所は宮島澈也だ"


たったそれだけの一言で、何の証拠もないこの噂の信憑性が大きく高まった。


理由は簡単だ。宮島澈也は早奈千秋の彼氏だ。もし早奈に何かあれば、宮島が最初に知るはずだ。逆に言えば、宮島は誰よりも早奈のことを知っているはずだ。つまり、この理由だけで、これほどまでに噂の信憑性が高まってしまったのだ。


しかし、よく考えてみればわかることだ。早奈と宮島が付き合っているという事実そのものが、噂ではないのか。


だが、世の中の大半の人はそうは考えない。


宮島が早奈が複数の男性とホテルから出てくるところを見たと言ったから、宮島と早奈の交際が本当だと決めつけ、同時に早奈と宮島が付き合っているから、早奈のラブホテル出入りの信憑性がさらに高まる。普通の人にとって、これは「完璧な論理のループ」を構成するのだ。


私のように最初から早奈と宮島が付き合っていないことを知っていなくても、落ち着いてよく考えれば、その論理の誤りに気づくのは実に簡単なことだ。だが、世の中の大半の人にそんな忍耐力はない。


「みなさん、落ち着いてください」


しかしね、この誤解を解くのは実に簡単なんだ。今、宮島君が自分は早奈と付き合っていないとみんなに伝えさえすれば、すべて終わる。


たまたま大半の人が陥りやすい論理の誤りを発見できたことは、私にとって非常に嬉しいことだが、それだけだ。結局のところ、やはりここまでつまらない。


「みなさんが千秋ちゃんが僕に浮気したって噂しているのを知っています。ですが、どうか行き過ぎないでください。すべては僕の責任です。千秋ちゃんにも事情があるはず。これ以上彼女を責めないであげてください」


は?まさか。なるほど、そういうことか。これですべて説明がつく。つまり、この件の目的はおそらく……これは面白すぎる。よかった、ここに転校してきて正解だった。さて、どんな面白いことが起こるだろうか?

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