第8話 変化です


「これ、誰がやったの?」


あらあら、今になってもまだそんなに凶暴なんだ。正直言うと、私もちょっと彼女の勇気には感心してる。多分、机に書かれた字が彼女を怒らせたんだろう。やっぱり、事の異常さに気づいたのは私だけじゃないみたいだ。


「もう一度聞く。いったい誰がやったの?」


さっきより大きい声だ。こいつ、そんなに怒る必要ある?結局は全部自分が悪いんだろ?自分が何をしたかよく反省したら?


「なに~、神経質すぎるんじゃない?」

「そうそう、ただの偶然でしょ」

「仕方ないよ、早奈って性格が最初から最悪だし」

「ってか、いつも自己中じゃん。マジでお姫様気取りかよ」


そうそう、なんで今でもそんなに上からなの?前までどうして彼女の性格がこんなに悪いって気づかなかったんだろう。前は好きだったのに、もう、完全に見た目に騙されてた。明明、前まで付き合おうなんて思ってたのに?今見ると、見た目はいいけど……


やめとこう、さっき何考えてたんだ?内心が汚い女は、見た目がいくら良くても意味ないだろ。後悔だ、なんで昔あんな女のことを好きだったんだ?


「みなさん、もう言わないで。早奈だって可哀想だよ。人は誰でも間違いを犯すもの。早奈も自分の過ちには気づいているはず。どうかもう一度チャンスをあげてください。お願いします」


さすが平田さんらしい対応だ。あの時は早奈を守ろうとして、援助交際がバレないようにしてたんだな。もう、平田さんってどうしてここまで優しいの?こそが本当の天使だ。


「もう、朋美ちゃんはこんな人間のためにそこまでしなくていいのに」

「大丈夫。だって私、早奈の友達だから」

「ううん、朋美ちゃんは天使みたい」

「朋美ちゃんがそう言うなら…早奈がちゃんと謝れば許してあげてもいいかも」


もう、どうしてここまで優しい子がいるんだ?今になってもまだ友達を守ろうとしてる。なぜだ、なぜ前まで気づかなかった?明明、こんな素敵な子がすぐそばにいたのに、外見だけの奴に目がくもらされてた。


「さあ早奈、ほら、みんなで謝ろう。みんなきっと許してくれるから」

「このクソ女!」


なにこれ、この早奈もやりすぎだ。私は急いで朋美を守るために駆け寄った。なに、わがままにもほどがある。これじゃあひどすぎる。


「最悪」

「こんな奴と同じクラスなんて」

「み、みんな、早奈のことをそんな風に言わないで」


もう、平田さん、どうしてそこまで優しくなれるの?だからこそ、ずっと早奈にいじめられてたんでしょ?思い返してみると、彼女、ずっとあなたを下僕のように扱ってた。そんな奴を友達だなんて、ひどすぎる。


正直、早奈にはちょっとしたお仕置きが必要だと思う。別に理由はないけど、彼女のやり方は明らかに行き過ぎてる。お仕置きしなければ、自分が悪いってことにも永遠に気づかないかもしれない。


「あら、ごめん、ぶつかっちゃった」

「おい、ここに物置くなよ、邪魔だろ」


見たところ、私と同じ考えの人は多いみたいだ。早奈自身がやったことに比べれば、私たちのすることは大したことない。それに、罰を受けなければ、自分が悪いってどうしてわかる?


「その目はなんだよ!みんな見てろ、売女が暴力振るおうとしてるぞ」


なに、また暴力を使うつもり?でも、私たちみんなが彼女にさせるわけないと思うけど。


『わあやばい、担任が来る!みんな席に戻ろう!』


その時、生徒が一人教室に入ってきた。先生が来たのか、仕方ない、急いで静かにしなきゃ。


……


その後何が起こったかって?正直、大して変わらない。クラスでの早奈への「お仕置き」は続いている。別にこれでいいと思う。早奈に過ちを認識させなければ、彼女は成長しない。だから私たちは彼女を助けてるんだ。もう、こんな状況なのに、まだ自分が悪いってわかってないの?


一方で、平田は次第に早奈のクラスでの地位を引き継いでいる。でも彼女はまだ早奈のことを心配しているみたいだ。もう、平田は優しすぎる。でも正直、早奈には少し勿体ないとも思う。あんなにいい顔してるのに、今では完全に無駄にしてる。


まあいいけど。私にとっては、誰だっていい。だって私はたくさんの「予備軍」を確保してるから。私も彼女たちの「予備」かもしれないけど、それでいい。一人でも本命になってくれれば。そして今、私は真の意味での「天使」を見つけた。


本来ならこれで終わりだった。学校での地位は平田が早奈に取って代わり、私の攻略目標も早奈から朋美に変わる。そうすればすべてが元通り動き出す。本来はそう、はずだった。


『真崎昴さん、取引に興味はありますか?』

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