静けさのなかに潜むもの
- ★★★ Excellent!!!
舞台は、夜のバー。
ウイスキーの入ったグラスを前に語られるのは、ひとりの男の奇妙な体験。
本作は、恐怖体験に耳を傾ける主人公を主役にした、どこか切なくて、やさしさを感じる短編小説だ。
なにより巧みなのは、この体験が恐怖として語られるべきものか、切ない別れとして受け取るべきものか……。
それらの境目が曖昧なまま、少しずつ溶けていく語りの構成だ。
夜の落ち着いたバーカウンターに置かれたグラスのなかで、ゆっくり形を崩していくロックアイスみたいに。