婚約破棄キターーー!!!!(大歓喜)

間咲正樹

婚約破棄キターーー!!!!(大歓喜)

「エリス、大事な話があるッ!」

「――!」


 私の婚約者であるアーベル第二王子が、夜会の最中に突如声を荒げた。

 こ、この雰囲気……、これはもしや――!


「今この時をもって――僕は君との婚約を破棄するッ!!」

「――!!!」


 婚約破棄キターーー!!!!(大歓喜)

 ふおおおおお、日頃ロマンス小説を読み漁っている私だけど、まさか自分の身に大人気ジャンルである『婚約破棄』イベントが降ってくるとは……!

 盛 り 上 が っ て ま い り ま し た。

 ……お、おっと、一人でズンドコしてる場合じゃないわ。

 ここは悲壮感を漂わせつつも、まずは理由を問い詰めなくては。


「……理由をお聞かせいただけますか?」

「フンッ、自分の胸に手を当ててよく考えてみるんだな!」


 いやいや、そんなこと言われても、これっぽっちも身に覚えはありませんことよ?


「アーベル様、その辺で。それ以上はエリス様がお可哀想ですわ」

「おお、リンダ、君は本当に優しいな」

「――!!!」


 泥棒猫もキターーー!!!!(大歓喜)

 ああー、やっぱりリンダが泥棒猫役だったのね?

 前々から怪しいと思ってたのよね。

 事あるごとにアーベル様に色目使ってたし。

 没落貴族の令嬢って大変ね。

 王族に取り入ろうと必死なのね、うんうん。


「君はこんな心の美しいリンダに、陰でいろいろと酷い仕打ちをしているそうじゃないかッ! 先日のリンダのネックレス盗難事件の犯人も君だろうッ!」

「そ、そんな、誤解です!」


 ううーん、惚れ惚れするくらいの濡れ衣ムーブ!

 大方リンダの自作自演でしょ?


「アーベル様、私はその件はもう気にしておりません。どうかエリス様にお慈悲を」

「ああリンダ、君は聖母の生まれ変わりなのかい?」


 オイオイそう言いつつもサラッと私が犯人だと決めつけてるじゃねーか。

 いやあリンダ、狙えるよ、あなたなら主演女優賞を(倒置法)。


「……と、いうわけだ。これ以上の議論は不毛だろう。エリス、君にはつくづく失望した。君のような不埒者を僕の妻にするわけにはいかない。――よって君との婚約は今この時をもって破棄するッ!」


 いやそれさっきも聞きましたけど(笑)。

 何回同じこと言うんですか(笑)。

 まあ、アーベル様が女癖が悪いのは前々から気付いてましたし、私もアーベル様に対しては欠片も愛情は持ち合わせてないのでノーダメですけどね(笑)。

 ……それよりも、ロマンス小説だとそろそろが来るはず!


「――フッ、そういうことなら、彼女の身は私が預かろう」

「「「――!!!」」」


 ヒーロー役キターーー!!!!(大歓喜)

 し、ししししかも、あのお方は第一王子のラルフ様!?!?

 高身長で甘いマスク、女性に対してのエスコートも完璧な上、趣味がお菓子作りというギャップ萌え要素もありッ!!

 全令嬢の憧れの的のラルフ様がヒーロー役とはッ!!


「――エリス、実はずっと前から君のことを陰ながら慕っていたのだ」

「――!! ……ラルフ様」


 ラルフ様は私の前で片膝をついて恭しく礼をした。

 はい落ちた。

 完全に今私は恋に落ちました。


「そ、そんな……、兄上! その女は人の物を盗むような痴れ者ですよッ!」

「痴れ者はお前のほうだアーベル!!」

「なっ!?」

「お前は然るべく裏を取ってからそう判断したのか? ただの憶測で言っているわけではあるまいな?」

「そ、それは……」


 流れ変わったな。


「で、ですがラルフ様、現に私のネックレスが盗まれているのは事実なのですッ!」


 お?

 泥棒猫も粘るねえ(高みの見物)。


「――そのネックレスというのはかい?」

「「「――!!!」」」


 ラルフ様は懐から趣味の悪いネックレスを取り出しリンダに手渡した。

 ネックレスキターーー!!!!(大歓喜)


「こ、これを、どこで……」

「君の部屋の前の廊下に落ちていたそうだよ。メイドが見付けてくれた。柱の影になっていたから見えづらかったのだろうね」

「そんな……、有り得ない……」


 FOOOOOOO!!!!

 きっとラルフ様がメイドに命じて、リンダの部屋を物色させたのだわ!!

 ねぇねぇ今どんな気持ち?

 出てくるはずのないネックレスが出てきて、どんな気持ちなのねぇ?


「アーベル、これでエリスの濡れ衣は晴れただろう。――だがエリスは私が一生懸けてでも幸せにするから心配はするな」

「あ、兄上……」


 プロポーズキターーー!!!!(大歓喜)

 FOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!


「そしてアーベル、お前からは王位継承権を剝奪する」

「なっ!!? 何故ですか兄上ッ!!」

「そんなッ!! ラルフ様ッ!!」


 ハイ、いよいよみなさんお待ちかねの断罪シーンですね。


「そんなこともわからないのか? お前は王家が決めた重要な婚約を、身勝手な理由で一方的に破棄したのだぞ? 本来なら死罪となってもおかしくない程の愚行だ」

「あ……、あ、ああ……」


 そうなんですよねえ。

 なんでロマンス小説に出てくる王子様って、簡単に婚約破棄しちゃうんでしょうね?

 普通に重罪ですよねそれって。


「と、いうわけで、お前とリンダ嬢にはよく奴隷が地下で回している謎の棒を、とりあえず十年程回してもらうことにする」

「兄上!?!?」

「な、なんで私も!?!?」


 ああー、ありますよねあの謎の棒。

 あれ何なんでしょうね?


「――連れていけ」

「「「ハッ」」」

「あ、兄上!! 兄上ええええ!!!!」

「いやああああああ、なんでよおおおおおおお!!!!!」


 お疲れ様でーす。


「――さて、エリス、よかったら私と踊ってもらえるかな?」

「――ええ、喜んで」


 私はラルフ様から差し出された手を、そっと取ったのでした。



 ――ハッピイイイイイイイイエエエエエエエンド!!!!!


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婚約破棄キターーー!!!!(大歓喜) 間咲正樹 @masaki69masaki

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