チー牛無双

@heyemou

第1話「チー牛、覚醒。」

——年始。実家。


親戚が集まる正月の食卓。豪華な料理。そしてなぜか、俺の料理だけ——チー牛。


母:「ユウ、そろそろ彼女くらい……。あなたの弟はもう結婚して、もうすぐ子供も産まれるって言うのに。」


父:「まったくだ。お前もいい歳なんだからな。」


親戚の無遠慮な視線が刺さる。


……なぁ。なんで俺、こんなとこいるんだ?


ユウ:「……なぁ。俺が今、手取りいくらか知ってんのかよ。」


母:「え?」


ユウ:「18万だよ。週6勤務で……18万。」


一瞬、誰も何も言わない。

笑い声が、テレビからだけ聞こえる。


母:「お母さんの言うとおりに普通に頑張っていれば、そんなことにはならなかったはずよ。」


ユウ:「ふざけんなよ!!!!」


——脳内で、ブチッと音がした。


ユウ:「これでも俺は精一杯頑張ってんだよ!“普通”って呪いを俺にインストールすんな!」


ユウ:「“いい子にしなさい”“ちゃんとしなさい”“人様に迷惑かけないように”……そんなクソプログラムばっかりぶち込んで!」


ユウ:「お前の不安を俺にインストールすんなよ!」


ユウ:「文句があんなら俺も弟みたいにイケメンで高収入に産み直してからにしろよ!」


——脳の奥で、“エラー音”が鳴る。


……これか。俺の人生、これだったんだ


他人が決めた設定ファイル。

“普通”というウイルス。

“いい子”というバグ。


……全部、アンインストールする


視界が一変する。

「親」「親戚」「世間」——全部、他人の設計したUIだった。

なら、リセットして……俺の人生、俺の仕様で書き換える


——チー牛、リブート。

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